3月14日に打ち上げられた、ヨーロッパとロシア共同の火星探査機「エクソマーズ」は、順調に飛行しています。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が23日に明らかにしました。

火星へ飛行中の微量ガス探査周回機(TGO)と着陸実証機「スキアパレッリ」の想像図

火星へ飛行中の微量ガス探査周回機(TGO)と着陸実証機「スキアパレッリ」の想像図 (© ESA/ATG medialab)

打ち上げ後、打ち上げに使用されたロケット「プロトンM」は10分間ロケットを噴射し、最終的にプロトンMの第3段で、探査機と、ロケット先端につけられた推進モジュール「ブリーズM」を切り離しました。
その後、10時間にわたってブリーズMのエンジン噴射が行われ、エクソマーズは無事火星に向かう惑星間軌道に投入されました。
この際、ブリーズMがいくつかの破片に分解したという情報もありましたが、ESAの記事ではこの点に触れていません。

現在のエクソマーズ探査機の状態について、ESAのフライトディレクターであるマイケル・デニス氏は、「ロシアのチームの努力によって、エクソマーズ探査機を極めて高精度で軌道に投入できた。探査機は正常で順調に火星に向かっている。」と述べています。微量ガス探査周回機(TGO)の状態も正常と確認されています。今後2週間かけて、電力系、通信系、スタートラッカー(恒星を目標にして自身を誘導する装置)や誘導制御系のチェックを行う予定です。
また、着陸実証機「スキアパレッリ」についても、今後数週間かけて全体チェックが実施されます。

4月に入りますと、ドイツ・ダルムシュタットにあるESAのヨーロッパ宇宙運用センター(ESOC)にて、エクソマーズの科学チームが搭載科学機器を順次起動し、初期チェックを開始します。
6月にはスペイン・マドリッド近郊にあるESAの科学コントロールセンターにて、TGOの飛行中チェックアウト(機器の試験)が実施されます。この試験ではエクソマーズのヨーロッパチームに加え、ロシアのロスコスモスのチームも参加します。

エクソマーズの打ち上げ

カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられるエクソマーズ (© SA–Stephane Corvaja)

いくつか小さな問題もあるようです。例えば通信確立後、数時間にわたって探査機のメインエンジンの温度が想定より高かったとのことです。この点については、TGOの主契約者であるフランスの企業、タレス・アレニア宇宙システムと協力の上、探査機が少し本来の予定より傾いていたため、太陽光で温まってしまったことが原因であると結論づけられました。

打ち上げから3日後の17日までに、ESAのミッションコントロールチームは、「打ち上げ・初期軌道フェーズ」(いわゆる「クリティカルフェーズ」。打ち上げ後探査機の状態が安定するまでの慎重な運用・監視を要する期間)が終了したと発表しました。
あとは各探査機の機器の状態が正常であることが確認され、10月の軌道投入、そしてその後の観測がうまくいくことを期待したいところです。

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