上記題名の通りですが、もう少し正確に書きますと以下のようになります。
今年末の月面探査ローバーの打ち上げを目指しているチーム「ハクト」の運営主体である株式会社アイスペース(ispace)と、放送局「TBS」(東京放送)を含む関連事業などを所管する(株)東京放送ホールディングスは、このほど、中期的な戦略的メディアパートナーシップ協定を締結しました。ispaceが5月31日に発表しました。

発表によると、「今後、 放送やデジタル発信、 様々なイベントを通して、 HAKUTOやispace社の活動をお伝えするほか、 世界的に成長が期待される民間企業による宇宙開発の動きを幅広く応援していきます。」とのことで、TBSグループ内には「横断的な『宇宙プロジェクト(仮称)』(プロジェクトリーダー:佐々木卓常務)を近く発足させることにいたしました。」としています。

TBSと宇宙、といえば、誰もが(少なくとも40代、50代の方は)覚えているであろうつながりが、宇宙飛行士打ち上げです。TBS創立40周年記念プロジェクトとして宇宙へジャーナリストを送る企画「日本人初!宇宙へ」を企画し、社内からキャスターである秋山豊寛氏と菊池涼子氏が選抜され、訓練の後、1990年12月に秋山豊寛氏がロシア(当時はソ連)のソユーズ宇宙船で宇宙へと旅立ちました。
従って、「日本人初の宇宙飛行士」は秋山豊寛さんであり、「日本人初のスペースシャトルで飛行した宇宙飛行士」が毛利衛さん(1992年9月)です。

ispaceは、今回のハクトだけではなく、将来的に月資源開発も目指していることから、この「中期的な」メディアパートナーシップは、そのようなことも含めたハクトの動きを追うための企画なのではないかと思います。例えば今後、バラエティなどの番組制作はもちろんのこと、TBSの独占取材によるispaceの月資源開発の動きのドキュメンタリーの制作や、関連したグッズ製作、イベントのタイアップなど、様々な可能性が考えられます。
このような取り組みを通して、宇宙をより身近にするだけでなく、両社ともが企業として潤うことを目指しているという点が、「戦略的」と称するゆえんでしょう。
なお、ハクトは多くの企業とのパートナーシップ協定を締結してきましたが、メディア関連企業とのパートナーシップ協定締結は今回がはじめてです。

ハクトのリーダーでispace代表取締役の袴田武史社長は、「TBSとのパートナーシップは、 宇宙をより多くの人に身近に感じていただける試みになると考えています。 TVコンテンツという分野との協業により、 多くの人の心の中にある『宇宙は難しい』『宇宙は夢みたい』という心理的なハードルを下げ、 宇宙に関わりたいと志す人を増やしていきたい。」と述べ、メディア関連企業とのパートナーシップ協定が、今後の認知度のより大きな向上、さらには将来的な宇宙産業の充実に向けた期待を語っています。

一方、東京放送ホールディングスの武田信二代表取締役社長は、上記のTBSの宇宙プロジェクトについて触れた上で「国際的な月面探査レースとさらにその先の宇宙開発に向けた挑戦を応援します。 HAKUTOならびにispaceが日本の技術水準の高さを示し、 人々に夢、 希望、 元気を与えてくれることを期待しています。」と述べ、さらに、より若い世代の宇宙へのチャレンジを支援していく姿勢を示しています。

今回のメディア企業とのパートナーシップ協定は、まさに技術系などの「ある程度考えられる」企業との提携とは異なる、非常に珍しい異分野のパートナーシップ協定といえます。かつて電通がJAXAと協定を結び、宇宙におけるCM撮影などコンテンツ制作で手を組んだということはありますが、民間企業同士となるとはじめてといえるでしょう。
そして、メディアという大きな力を得ることで、宇宙に興味を持つ人以外にも宇宙、あるいは宇宙開発、あるいは月探査への認識を広げ、ひいては宇宙開発や月・惑星探査が日本中に浸透するきっかけになるかもしれない、ということを、編集長としては大いに期待しています。

一方、ハクトの挑戦はまさに日本全体が応援する挑戦でもあります。今後、特に報道という分野において1メディアが情報を独占してしまうことがないよう、特に報道面での情報流通には公平性を記することを、ハクト(ispace)とTBSには望みたいと思います。