今年11月30日に打ち上げられるとみられる中国初の月無人サンプルリターン機「嫦娥5号」。ここのところ情報が多数出てきていますが、今度は打ち上げからカプセル帰還までのシナリオが明らかになりました。人民網日本語版が伝えています。

記事そのままというのはあまりいいものではないのですが、この記事から、箇条書きに直した形で飛行の様子をたどっていきましょう。

  1.  打ち上げ(おそらく海南宇宙センターから)。重さは打ち上げ時に8トン以上。
  2.  月トランスファー軌道(月遷移軌道。地球から月へ向かう軌道)を飛行。途中に軌道修正。
  3.  月周辺で逆噴射し、月周回軌道に投入される。
  4.  月周回中に、月に着陸する着陸・上昇モジュールと、月を周回する軌道・帰還モジュールの2つに分離。
  5.  着陸・上昇モジュールを分離。予定地点に向けて軌道を変更し、減速、着陸。
  6.  着陸・上昇モジュールは、着陸地点においてサンプル回収を実施。
  7.  サンプル回収終了後、上昇モジュールが月面から上昇(着陸モジュールはそのまま月面に残る)。
  8.  上空で、上昇モジュールは月を周回していた軌道・帰還モジュールとドッキング。
  9.  月面サンプルが上昇モジュールから帰還モジュールへと移送される。
  10.  作業完了後、上昇モジュールを切り離し(おそらくは投棄)。
  11.  軌道・帰還モジュールは月から地球への軌道(月・地球トランスファー軌道。地球遷移軌道)に入り、地球へ向かう。
  12.  地球上空で帰還モジュールを切り離す。
  13.  帰還モジュールは大気圏に突入し、その後所定の着陸地点(陸上)に帰還。

嫦娥5号は4つの異なるモジュールからなるかなり複雑な構造であることがわかります。また、月への飛行はこれまでの嫦娥シリーズで得た経験を、地球帰還については有人宇宙船「神舟」シリーズでの経験などを活用するものと思われます。初挑戦となるのは、上記7.〜9.にあたる、上昇モジュールが月サンプルを持ったまま上空で周回しているモジュールとドッキングし、その後上昇モジュールの中のサンプルを帰還モジュールに移送する部分です。この部分の成功が、嫦娥5号のミッション成功の鍵になるのではないかと筆者は見ています。
もちろん、他の部分が決して問題ないわけではありません。ミッションというのは同じことをやっていてもどこかでトラブルというのが起きるものですから、各工程でトラブルがないよう、当局にはしっかりとした点検・確認を行ってほしいものです。