中国の月探査機、嫦娥5号の開発についての情報が入ってきました。人民網日本語版が、科技日報の記事を引用する形で伝えています。

それによりますと、嫦娥5号は試作機の製作段階から、いよいよ開発機の製作段階(宇宙探査の用語でいえばフライトモデル=FM製作)に入ったとのことです。記事の内容をみると、プロジェクト移行審査のようなことが行われており、その段階が終わって一歩進んだとも考えられます。

さて、1つ気になるのは記事における打ち上げ時期の表現です。記事では「2017年頃に開発を完了し、時期を見計らい打ち上げられる見通しだ。」と書かれています。ちょっとみるとやや奇妙な言い回しのように思えます。この理由は、2018年に打ち上げられるとされる嫦娥4号です。
すでに嫦娥4号の打ち上げが2018年になることが確定しています。としますと、同じ時期に嫦娥5号を打ち上げ、開発するというのは、資金や人員を両方に割くことになるというだけでなく、通信施設が不足するなど様々な問題を生みかねません。
そうなれば、2017年の…つまり、一歩先の時点で嫦娥5号を(番号が逆になっても)先に打ち上げ、その上で史上初の月面着陸という大義を背負った嫦娥4号を万全の体制で打ち上げる、というシナリオが考えられます。この点については以前ブログでも指摘しておりましたが、もう1つの可能性として提示していた「2020年ころまで嫦娥5号の打ち上げを延長する」という可能性については、2017年に探査機が完成するとなるとかなり薄くなってきます。探査機自体を完成したまましばらく放置しておくというのは、探査機の各種機器の劣化などを考えると好ましいことではありません。

いよいよ、中国の月サンプルリターン計画が現実味を帯びてきました。引き続き状況に注目していきましょう。