中国の月探査機「嫦娥4号」の打ち上げが2018年となることが正式に決まりました。人民日報の報道を人民網日本語版が伝えています。
それによると、国家国防科技工業局がこのほど記者会見を開き、嫦娥4号の計画について月探査事業重大特別プロジェクト指導チームの審査に合格、正式にプロジェクトがスタートしたとのことです。

以前お伝えした通り、嫦娥4号は史上はじめて、月の裏側への着陸を目指すことになりました。ただ問題は、月の裏側は地球からはみえないため、通信がそのままではできないことです。
これをクリアするため、嫦娥4号のための通信衛星を打ち上げるとのことです。この通信衛星は月・地球間のラグランジュ点(L2)に打ち上げられ、嫦娥4号からの通信を地球へと中継する役割を担います。また、L2からは月全体を観測できるため、観測業務も行うようです。

嫦娥4号自体は、月の裏側の地質、とりわけ月でもっとも古いとされる地質の解明や、電波天文学に関する観測などを実施する予定のようです。繰り返しになりますが、月の裏側は地球からはみえません。通信には苦労しますが、このことは地球からの電波が月によって遮断され、雑音が少ないことを意味します。宇宙からやってくる電波の観測にはこの上もなく適した環境というわけです。
記事中では「低周波天文観測」となっていますが、具体的な観測内容は現時点では不明です。

嫦娥4号の打ち上げは、当初は2015年ころともいわれていました。確かに、中国の月探査機打ち上げは、嫦娥1号が2007年、2号が2010年、3号が2013年とほぼ3年おきに行われています。
嫦娥4号は、嫦娥計画の常として、同じ着陸機である嫦娥3号のバックアップ機体を利用しているはずです。そうすると、開発にそれほど時間がかかるとは思えません。にもかかわらず、嫦娥3号と4号の打ち上げの間には、これまでよりも大きな時間が開くことになりました。
考えられる理由としては、

  • 月の裏側への着陸技術(地球からの通信ができない、あるいは遅延する状態での制御技術)の開発に時間がかかっている。
  • 打ち上げが現在中国が開発を進めている海南島の宇宙センター(海南宇宙センター)で行うとした場合、その開所に合わせている。
  • 中国全体の宇宙開発予算の減少、あるいは(それと関連して)予算における重点項目の変化。

などかと思われますが、いずれにしても打ち上げの予定は確認されました。今後は開発が順調に進み、打ち上げへと進めるかどうかを見守りたいともいます。

中国は、着陸機のあとには月からのサンプルリターンを計画しています。それが、嫦娥5号、及び嫦娥6号となります。嫦娥5号は元々の計画では2017年頃の打ち上げといわれていましたが、それについては現時点でどのようになっているのか不明です。ひょっとすると5号を先に打ち上げる可能性もあるでしょうし、4号の成功をみた上で5号を2020年頃(あるいは2020年代前半)に打ち上げる可能性もあります。
中国の月探査については、今後も新しい情報が入り次第、随時お伝えします。

【1月21日午後4時更新】中継衛星についてさらに詳細な情報が入ってきました。どうやら、この中継衛星は、ラグランジュ点(L2)を中心に、他のラグランジュ点を周回する、「ハロー衛星」と呼ばれるタイプの衛星の模様です。