アメリカが主導し、日本も参加する有人月面探査計画「アルテミス計画」において、日本人宇宙飛行士が2名、月面に降り立つ予定であると、読売新聞が報じました。

アルテミス計画のイメージ

アルテミス計画実施のイメージ。アポロ計画とは異なり、将来的に月面に拠点を築くことも考えられている。
(Photo: NASA)

アルテミス計画は、半世紀以上ぶりに人類を再び月へと送り込む計画です。ただ、アポロ計画とは異なり、将来的に人類の滞在を目指している計画です。
アルテミス計画では、合計3回の打ち上げにより月面に到達することを目指しています。第1回は無人、第2回は有人で月周回、第3回で月面に着陸する予定です。第1回は2022年11月に打ち上げられて成功、第2回は2025年9月、第3回は2026年9月(それぞれもともとは2024年、2025年に予定されていた)に打ち上げられる予定です。

アルテミス計画はこの3回目の月面着陸で終わることなく、その後も続行される予定になっています。
現時点では、アルテミス4が2028年、アルテミス5が2030年となっています。ミッションの詳細については現在検討中のようですが、月面着陸、月上空の宇宙ステーション「ゲートウェイ」の建造などの活動が予定されているようです。
今回の記事にある日本人宇宙飛行士2名の月面着陸は、おそらくはこのアルテミス4または5、あるいはそれ以降なのではないかと編集長(寺薗)は推測しています。

アルテミス3は、半世紀以上ぶりの月面着陸です。宇宙船やロケットが正常に動作しないリスクもあります。ある程度経験を踏まえたミッションであるアルテミス4や5で日本人が向かう方がリスクが少ないという考え方ができます。
また、月面着陸以後、月面滞在を見据えた活動のために行われるアルテミス4や5は、将来にもつながるという点で、いまの国際宇宙ステーション(ISS)への日本人の常時滞在と似たような形で、日本の宇宙での存在感を増す方向になることが期待されます。
また、2022年末の宇宙戦略本部会議では、岸田首相が「2020年代後半の日本人の月面着陸を目指す」と発言しており、これとの整合性を考えると、やはりアルテミス4か5で日本人が月面に降り立つ可能性が高いといえます。

さらにこの記事で注目されるのは、日本(JAXAとトヨタ自動車)が開発している有人月面ローバー「ルナ・クルーザー」に言及している点です。
記事では、このルナ・クルーザーを10年運用すると、具体的な運用期間に言及しています。
ルナ・クルーザーは宇宙飛行士が2名搭乗し、燃料がいっぱいの状態で月面を1000キロ動くことが可能という、高性能の月面ローバーです。内部は与圧されているため、宇宙飛行士は宇宙服を着ることなく内部での滞在が可能です。動力機関は燃料電池で、月の水から生成される水素と酸素を利用することになりそうです。
NASAでも月面有人ローバーの開発が進められていますが、今回は日本が開発しているローバーの優位性が評価された形といえるでしょう。

今回の記事は、12月にあった同様の記事と内容が類似しています。また、報じているのが読売新聞だけですので、確実性についてはなんともわからないところがあります。前回の記事でも「1月には文部科学大臣が訪米し署名文書に調印」とありましたが、この時期がずれているとも考えられます。
ただ、上記の通り、日本人宇宙飛行士の月面到達については方向性は以前から決まっていますので、その時期や詳細が徐々に詰められてきているともいえるでしょう。引き続き状況を注視していく必要がありそうです。