読売新聞などの報道で、日本人宇宙飛行士2名がアルテミス計画で月面に降り立つ旨、文部科学省とNASAが最終調整に入っていると、23日に報道がありました。早ければ来月にも文部科学大臣がアメリカを訪問、NASA長官と覚書を結ぶことになるとのことです。

アルテミス計画のイメージ(ロゴ、月、火星)

アルテミス計画のイメージ。左下はアルテミス計画のロゴ、月の背景に火星が遠くに映し出されていることで、この計画が究極的に有人火星探査に結びつくことが示されている。
(Photo: NASA)

報道は以下をご覧下さい。

また読売新聞系列である日テレ(日本テレビ放送網)のニュースサイトである日テレNEWSでも同じ内容を映像で報じています。

本サイトをご覧の方にはいまさら説明の必要はないかと思いますが、アルテミス計画は、アメリカが主導し、日本も加わって進められている国際共同の有人月探査計画です。
計画では、2024年末に初の有人飛行となるアルテミス2(月の周りを周回し戻る)を実施、2025年末に月着陸を目指すアルテミス3を打ち上げるという構想になっています。但し、アルテミス3については月着陸用の着陸船(スペースXが開発するスターシップを月着陸用に改造したものとなる予定)をはじめ、各種コンポーネントの開発遅れから、2025年中の実施は難しいとの見方が出ています。

アルテミス計画に日本も参加していることから、日本人宇宙飛行士が月面に降り立つことはこれまで何度も閣僚の間から発言がありました。
昨年(2022年)12月の宇宙戦略本部会議でも、岸田首相が「2020年代後半の日本人の月面着陸を目指す」と述べていました。また、すでに月上空の宇宙ステーション「ゲートウェイ」について、日本人宇宙飛行士が常時滞在するという覚書がNASAと文部科学省で結ばれています。
今回の報道…が正しいとして、日本の文部科学省とNASAとの覚書の締結は、そこからさらに一歩進み、日本人宇宙飛行士の具体的な月面到達の日程や人数などになるかと考えられます。

すでにゲートウェイには1名常時滞在が決まっていること、報道で「2名」という数字が出ていることを考えると、月面に降り立つ宇宙飛行士とゲートウェイ滞在の宇宙飛行士が1名ずつ、計2名という形になるかと思います。アルテミス3で月面に降り立つ宇宙飛行士はアポロ計画と同じ2名の予定であり、2名とも日本人となるとコミュニケーションや主導国アメリカとの調整で問題になるかと思われます。

次に時期です。
アルテミス3のあと、2028年にアルテミス3、2029年にアルテミス4がそれぞれ予定されています。ただ、上述の通り、アルテミス3が遅れる可能性があり、その場合、2027年くらいまでずれ込むのではないかともみられています。となれば、2027年から年1回のペースでの着陸が予定されることになります。
一方、最初のうちはまずアメリカが優先的に宇宙飛行士を月面に送り込むでしょうから、しばらく経ったアルテミス5あたりで日本人宇宙飛行士を月面に送り込むという可能性が考えられます。
オライオン(オリオン)宇宙船などへの習熟訓練も必要ですし、月面到達となると訓練量も膨大になります。ですから、訓練にもそれなりの時間をかけることが必要です。

また、2029年は、ゲートウェイの完成が予定されている年でもあります。であれば、完成を機に常時滞在の日本人宇宙飛行士を含めて2名の日本人のクルーで(あとはアメリカの宇宙飛行士)4名で地球から出発、うち1名がゲートウェイに滞在し、1名が月面着陸に挑むというシナリオが考えられます。そして1名はそのまま残って長期滞在…という形になるでしょう。

全ては(早ければ)来月にも結ばれる覚書次第、というところですが、いよいよ日本人の月面到達が迫ってきました。
うれしいことではある半面、月面到達やゲートウェイ滞在に対して日本がアメリカに払う対価の額など、考えなければいけない要素もあることは確かです。またアルテミス計画自体予定が常に揺れ動き、計画の先行きがなかなかみえないという問題もあります。
文部科学省、そして政府は、計画について随時情報を開示すると共に、特に予算面についてていねいに国民への説明を果たしていくことが求められます。