長年にわたって月をはじめとする惑星表面の地質の研究や生物関連の研究を続け、火星隕石から生命の痕跡とみられるものを発見して一躍話題になった、NASAジョンソン宇宙センターの宇宙生物学部門主席科学者、デビッド・マッケイ氏が、2月20日に亡くなりました。77歳でした。

デビッド・マッケイ氏は1936年生まれ。学部生としてテキサスのライス大学に在学中、ケネディ大統領のあの有名な「人類を月に送る」という演説に間近で触れ、宇宙への強い関心を抱きます。
大学での専攻が地質学であったこともあり、アポロ計画では宇宙飛行士の地質学の面からの教育、トレーニングを行いました。アポロ11号で月面に降り立ったニール・アームストロング、バズ・オルドリン両宇宙飛行士の地質学面でのチーフトレーナーでもありました。
そのこともあり、アポロ11号の月面着陸の際には、地質学者として唯一、ミッションコントロールルームから人類初の偉業を見守りました。

その後、アポロ計画で持ち帰られたサンプルを利用して、デビッド・マッケイ氏は月の表面の砂(レゴリス)の研究を精力的に推し進めます。このレゴリスに関する論文は200本以上にものぼり、砂の中での揮発性物質の蒸発の機構や砂の間にある空隙の作られ方といったさまざまな事柄について研究を重ねていきます。

彼の研究対象はその後、月だけではなく惑星など、より広い世界へと進んでいきます。1996年、彼は、火星から飛来した隕石ALH84001の中に、微生物の痕跡と考えられる痕跡を見つけたと発表しました。この発表、及び研究成果は世界を驚かせ、論文自身は近年で最も多く引用された論文となり、またこの発表を契機として、アメリカの火星探査計画が「生命の存在を確かめる」ことを大きな目標とするようになりました。
このALH84001中の「生命体」については現在でも研究が進んでおり、肯定的な結果、否定的な結果両方が出ていますが、デビッド・マッケイ氏の発表が、研究者たちを大きく動かしたことは誰もが否定しない事実であるでしょう。

デビッド・マッケイ氏は出身大学のライス大学から優秀学士賞を、NASAからは優秀研究表彰を受けるなど、数多くの賞を受賞しています。また、その功績を称える意味で、2002年、小惑星6111に「Davemckay」と命名されました。

惑星地質学、とりわけ惑星表面の物質の地質学的な観点からの研究のパイオニアであった彼の業績は、今後も多くの研究者に受け継がれ、語り継がれていくことでしょう。心よりご冥福をお祈りいたします。