火星探査機マーズ・サイエンス・ラボラトリー(愛称「キュリオシティ」)が、いよいよ活動を開始し、着陸点から動き始めました。また、この着陸点は、先ごろ亡くなった偉大なSF作家で、火星に関する作品も手がけたレイ・ブラッドベリにちなんで、「ブラッドベリ着陸点」と名付けられました。
着陸点の名前は、キュリオシティの科学チームの提案に基づくものです。レイ・ブラッドベリは92年前の今日(22日)に生まれ、本年6月に死去しました。
レイ・ブラッドベリ氏は、70年以上にわたって活躍してきた作家であり、多くの世代に共感を呼び起こす作品を数多く執筆しました。数百にもわたる短編小説、そして書籍は50冊以上にもなるという非常に多くの作品を生み出しており、小説だけではなく、数多くの詩、随筆、オペラ、演劇、テレビドラマ、脚本なども手がけました。この時代のもっとも著名な作家といってもよいでしょう。
有名な作品としては『華氏451度』『火星年代記』『刺青の男』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』などがあります。また、ジョン・ヒューストン監督の映画「白鯨」の脚本も手がけ、アカデミー賞にノミネートされました。65の作品はTVシリーズ「レイ・ブラッドベリ劇場」でドラマ化され、その中の『ハロウィーンがやって来た』 は、エミー賞を受賞しています。
さてローバーですが、最初の行動ということで、ローバーの最初の動きは、前進、転回、後退を組み合わせたものでした。ローバーは約6メートルほど動きました。
今日(22日)の試運転により、ローバーの移動システムの動作確認が行われたほか、最初のわだちが写真に記録されました。本日の記者会見の席では、ローバーの主席運転者であるマット・ハバリー氏が、運転計画に基づくローバーの動きのアニメーションを披露し、「ローバーは完璧に動作している。これからたくさんの驚くべき探検が待っている。」と述べています。
ローバーはしばらくブラッドベリ着陸点近辺にとどまり、機器の動作チェックや周辺の調査を行います。その後、南東約400メートルにある最初の目標地点へと向かいます。
マーズ・サイエンス・ラボラトリーのプロジェクトマネージャーであるピート・サイジンガー氏は、「キュリオシティは、過去の火星探査ローバーに比べても圧倒的に複雑なシステムを持っている。最初数週間でのテスト及び初期動作確認は、私たちの貴重な国家財産を安全に動かすための基礎作業となる。16日間(着陸点に)とどまっている間にも、多くの進歩を成し遂げている。」と述べています。
科学チームでは、ローバーのマストに設置されたカメラを使い、近辺あるいは遠くの科学目標になりそうなものをチェックしています。
化学分析カメラは、すでにレーザー光を発射して装置の実験を行いました。この装置の主任科学者である、ロスアラモス国立研究所のロジャー・ワインズ氏によると、調査した岩「ゴールバーン」は、玄武岩に近い組成を持っているとのことです。彼は、この岩はおそらくは堆積岩の中に挟まっている玄武岩なのではないかと推測しています。
・JPLのプレスリリース (英語)
  http://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2012-256
・マーズ・サイエンス・ラボラトリー (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/mars/exploration/MSL/