先日着陸に成功したNASAの火星探査機「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(愛称「キュリオシティ」)の着陸は、いわゆる「恐怖の7分間」で大いに注目されました。ところで、この着陸の過程が、なんと火星を周回している探査機から撮影されていたのです。
NASAは6日、火星上空を周回している探査機「マーズ・リコネサンス・オービター」(MRO)のカメラが、降下中のキュリオシティを撮影することに成功したと発表しました。
今回撮影に成功したカメラは、最大解像度50センチメートルという超高性能を誇る、高解像度撮像装置(HiRISE: ハイライズ)です。今回の撮影は結構ぎりぎりのタイミングだったようで、MRO・HiRISEの担当科学者、サラ・ミルコビッチ氏によると、「あと1秒前に撮影していたか、あるいはあと1秒後に撮影していたら、写真に探査機(キュリオシティ)が写っていることはなかっただろう」とのことです。何しろ、3日前にMROにコマンドを送って、あとはキュリオシティがその通りに降下してくれることを祈るということですから、いかにうまくいったのかということがわかるかと思います。

MROが撮影した降下中のキュリオシティ

MROが撮影した降下中のキュリオシティ。左側の囲みを拡大したのが右側。NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona)

写真は、キュリオシティの上空340キロの地点から撮影されました。キュリオシティ自身はもちろんのこと、ロケット推進用の背面部も移っており、撮影時点ではまだこれらが展開されていなかったことがわかります。撮影時点ではキュリオシティ自身は火星表面の上空約3キロほどのところにいた模様です。
「まぁ、火星でのパパラッチみたいなものですかね。今回は確実に、NASAの火星セレブを間近で捉えたというわけです。」(ミルコビッチ氏)
現在、NASAジェット推進研究所(JPL)のキュリオシティのチームは、ローバーの行動に向けて、ローバーのチェックを始めています。まずいちばん重要になるのは、通信に向けた高利得アンテナ(ハイゲインアンテナ)の展開です。これを使えば、地球との直接高速通信も可能になります。実際には、ローバーと地球との交信は、上空を周回するMROなどをはじめとした各探査機との中継がメインとなります。このほうがエネルギーをよリ使わずに済むからです。
今後ローバーの準備が済み次第、キュリオシティの活動がいよいよ開始されます。