到着を喜ぶJPLのスタッフ
火星探査機フェニックスは、火星に無事着陸しました。
アメリカ、カリフォルニア州パサデナにあるジェット推進研究所 (JPL) では、現地時間5月25日午後4時53分44秒(日本時間5月26日午前8時53分44秒)に、着陸を知らせる信号を受信しました。
管制・運用を行っているJPL、探査機を製造したコロラド州のロッキード・マーチン宇宙システム、そしてデータ解析を担うアリゾナ大学では、待ちに待った火星着陸を祝いました。JPLにはNASAのマイケル・グリフィン長官も駆けつけ、管制室の中で一緒に着陸成功を祝いました。
今回は、これまでの「マーズ・パスファインダ」「マーズ・エクスプロレーション・ローバ」で行われてきた、エアバッグを利用した方法ではなく、ロケットの逆噴射による着陸が行われました。この方法は、実に32年前(1976年)のバイキング探査機の着陸に用いられて以来のものです。
グリフィン長官は、「信じられないようなみごとな成功の場に立ち会えたことを喜びたい。」とコメントしています。
フェニックス探査機は、昨年(2007年)の8月4日に打ち上げられ、飛行を続けてきました。長い長い火星への飛行の後、7分間にわたる、火星大気への突入の時間が待っていました。
「いちばん苦しい時間を過ぎて、ようやくほっとすることができた。しかし、フェニックスが太陽電池パネルを開いて、自分自身の力で発電できるようになることを確認しなければならない。」(フェニックスの計画責任者のバリー・ゴールドスタイン氏)
「着陸は本当にスリリングだった。しかし、チームは探査機が正常な状態にあることを示す信号を今か今かと待ちかまえていた。私は熱狂を抑えることがほとんどできない。フェニックスが着陸地点の写真を送ってくれば、この探査計画のさい先のよいスタートとなるだろう。」(フェニックスの主任研究者で、アリゾナ大学のピーター・スミス氏)。
火星表面に着陸したフェニックス探査機(想像図)
次の大きな出来事としては、2日後に予定されている、7.7メートルもの大きなロボットアームの展開があります。この大きなロボットアームを使って、地表の土や地面の下の氷などの採取を行うことになっています。
着陸成功の信号は、火星の地表にいるフェニックスから、2001マーズ・オデッセイ探査機を中継して地球に伝えられました。
フェニックス探査機は、実は2001年に着陸する予定で作られていた着陸機の部品を利用して作られています。1999年、マーズ・ポーラー・ランダーが着陸に失敗し、2001年に予定されていた着陸機がキャンセルになってしまいました。フェニックスはその「やり直し版」といえるものです。科学者たちは、2002年に再度この「フェニックス」計画を立案し、未使用の部品を活用するという機会を考え出しました。この2002年のはじめに、2001マーズ・オデッセイ探査機が、火星表面に大量の水があるらしいという証拠を発見したということも追い風になりました。フェニックス計画はその際に、24もの競合プロジェクトの中から選ばれました。
・JPLのプレスリリース (英語)
  http://www.jpl.nasa.gov/news/news.cfm?release=2008-081
・フェニックス (月探査情報ステーション)
  http://moon.jaxa.jp/ja/mars/exploration/Phoenix/