アポロ11号が月に降り立ったのが1969年。それ以来、宇宙開発の技術は著しい進歩を遂げてきました。かつてのSFでは、21世紀になれば月面基地ができ、普通の(訓練を受けていない)人間でも月旅行ができる、などといわれてきました。
しかし現実問題としては、まだ月に住むどころか、人間を月に送ることができるロケットすら、私たちは持っていません。もちろん、かつてはサターンV型ロケットのような、人間を月に送ることができるロケットを持っていたのですが、今はないのです。また、スペースシャトルは地球の周り(高さ300キロ程度)を飛ぶことを目的としていますので、月まで行くことはできません。
なぜ私たちはまだ月に住めないのでしょうか。まず、技術的な面ですが、月に住むという点からいえば、月の昼間だけに限定すれば、現在の技術で月に居住することはおそらく可能だと考えられます。
いま国際宇宙ステーション(ISS)の建設が進んでいますが、宇宙ステーションで使われている居住施設の技術は、そのまま月面での滞在施設の建設技術として使うことができます。宇宙ステーションの環境と月面の環境は、重力などを除いてそう大きく変わりませんので、その技術の延長線上で、月面基地を構築することがおそらく可能でしょう。
ただ、問題は長期的な滞在を目指す場合です。特に、月の夜を克服する技術が非常に困難です。これは、
- 月の夜の間のエネルギーの確保(太陽光がないため、太陽エネルギーが使えない)
- 長期滞在のための、空気および水など、人間が生きていくための必須物質の確保
などがあります。
こういった問題を克服するために、世界中で研究が進められています。国際宇宙ステーションの長期滞在などもそのための一環ですので、今後早いうちに解決のめどが立つのではないでしょうか。
月面まで人間を輸送する手段については、各国で将来を見越した開発が行われています。
アメリカでは「コンステレーション計画」の一環として「オライオン」という宇宙船を開発していましたが、この計画は2010年に中止されてしまいました。ただ、将来的に宇宙船を開発していく予定です。中国やインドも有人月探査を進めようとしています。
ただ、これまでそのようなロケット・宇宙船を開発してこなかった理由としては、経済的、政治的な問題が大きいと思います。経済的な面からいえば、超大型の有人ロケットを開発するのに費用がかかること、また打ち上げなどにも費用がかかることが大きな問題です。また、超大型のロケットは月に人を送るためだけにしか使えないため、通常の人工衛星などの打ち上げに使うにはコストがかかりすぎるということもあります。
政治的な問題は、国が月に人間を送ることを決断するかどうかということです。巨額の費用が見込まれる計画を国として進めるかどうかという問題が大きいのです。
いずれにしても、技術的な問題は、国際宇宙ステーション計画の延長線上で少しずつ解決されていくと思われます。また、経済的な問題も、技術の進展でコストが下がってくれば解決する見通しが出てくるでしょう。いずれは月に人が戻り、数日、あるいは数ヶ月滞在するということになると思います。
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