冥王星の素顔も驚くべきものでしたが、その双子天体ともいえる衛星カロンについても、最新のニューホライズンズの映像は驚くべき素顔を捉えました。

ニューホライズンズが捉えた冥王星カロンの姿

ニューホライズンズが冥王星最接近時に捉えた衛星カロンの詳細画像。46万6000キロの距離から撮影。(© NASA/JHUAPL/SwRI)

この写真は、ニューホライズンズの広範囲カメラ(LORRI)により捉えられました。撮影は最接近直前の7月13日(アメリカ現地時間)、約46万6000キロの距離からの撮影です。データは情報量を削減するために圧縮されており、コントラストがはっきりした領域であれば、5キロほどの大きさの地形を見分けることができます。

この写真をみて一目でわかるのが、写真の中央部に走る大きな崖、あるいは溝のような地形です。長さは1000キロにも及び、カロンの地殻が何らかの理由により裂けたことを伺わせます。
まだなぜそのようなことが起きたのかはまったくわかりませんが、おそらくはカロン内部からのエネルギーが作用したものと考えられます。
また、右上の方、写真の切れ目にわずかに写っている地形はおそらくは峡谷のような地形で、深さは7~9キロと、グランドキャニオンをはるかに超え、太陽系最大の峡谷である火星のマリネリス渓谷にも匹敵するような地形であるとみられています。

また、カロンには予想していたよりもクレーターが少ないことに、科学者は一様に驚きの声を上げています。カロンの赤道付近、写真ではいちばん下の方になりますが、太陽の光が斜めから差し込むことによって地形がその影でわかりやすくみえている場所があります。しかしここでも、クレーターが少ないのです。
クレーターが少ないということは、衝突が少ないというよりは、地表がそれだけ「若い」、つまり何らかの理由で地表が新しくなっていることを意味しています。ただ、直径が1200キロ足らずのこの天体で、先の溝も含め、地質学的に活発な活動を引き起こすエネルギーが何なのか、まだ見当もつかない状態です。

ニューホライズンズ探査機が遠くから捉えていたカロンの画像でも、極地域には暗い箇所があることがわかりました。今回の詳細な写真で、この地域の様子がよりはっきりと捉えられました。この暗い領域の境目はあまりはっきりとしておらず、徐々に暗くなっているようにみえます。どうやらクレーターのようなはっきりとした地形による暗さではなく、暗い(黒っぽい)堆積物が薄く積もっていることを示しているのではないかとみられます。また、一部はっきりと境界線がみえる領域もあり、多角形の形状を示しています。これは何らかの地形構造と考えられますが、この部分のより詳細な写真(データ)が待たれるところです。

このように、カロンの表面は(地質学的な意味で)若く、また多様性を持った地表であることがわかります。
今回公表されたデータは、データ量を削減するために圧縮(実際には、画像の量を縮小するために、解像度を落としていると思われます)をかけてしまっています。そのため、コントラストがあまりはっきりしない領域では地形などを見分けにくくなっています。また、全体に「のっぺり」とした画像となってしまっているため、地形がなめらかにみえている可能性もあります。
圧縮がかかっていない(おそらくは高解像度の)画像はまだニューホライズンズ探査機のデータ蓄積領域の中に残っており、後日地球へと送信されてくる予定です。より詳細なデータとその解析は、それを待つことになるでしょう。

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