これまでニューホライズンズ探査機によって観測されたデータに基づいた冥王星の地図が、NASAより公開されました。地図とはいっても、これまでの観測データを写真として貼り付けたものですが、私たちが今手にする、もっとも詳しい冥王星の「地図」であることには変わりありません。

冥王星の地図

8日にNASAから公開された冥王星の地図。地図の内容は以下本文を参照。下部分は観測がまだなされていないために空白(黒)。((c) NASA/JHUAPL/SwRI)

この地図は地球上でよくみる四角い形をしていますので、世界地図と同様、球面を投影したものとお考えください(なお、NASAのページには図法の説明は特にありませんでした)。
縦方向は緯度、横方向は経度です。横の線、真ん中付近に「0°」と書かれている線がありますが、ここが赤道です。赤道の下側が南緯、上側が北緯となるのは地球と同じです。図のいちばん下、「90°S」と表示されている線は南極です。図のいちばん上の横の線、「90°N」と表示されている線は北極を示します。
一方、経度の方ですが、いちばん左が東経0度(0°)、中央が東経180度(180°E)、いちばん右側が東経360度(すなわち東経0度と一緒。360°E)となっています。地球とは違い、西経・東経の区別はなく、東回りに0度から360度までという仕組みになっています。
また、赤道から少し下、南緯20度くらいから南側は真っ黒になっていますが、これはまだ探査機での観測が行われていない領域です。
図は、広範囲カメラ(LORRI)によって撮像された白黒のデータに基づき、カラーでの撮像が可能な冥王星カメラ(Ralph)のデータを合成したもので、さらにこの位置情報に基づいて地図として展開したものです。撮像データは6月27日から7月3日までのものを使用しています(時間はアメリカ現地時間)。
なお、この地図の中心は、7月14日、ニューホライズンズが最接近する場所となります(といっても上空を通過するので、最接近する場所の真下、ということになりますが)。

先日公開された初の冥王星のカラー写真でもわかるように、冥王星の表面には黒い部分があることが科学者の(そして一般の人たちも)興味を惹いています。こうして地図でみてみることで、この黒い領域がどのような形をしているのかがよくわかるようになりました。
この地図をみてみますと、東経0度〜180度、赤道の周辺部分に、大きな塊のようにみえる黒い領域があることがわかります。とりあえずこの領域はチーム内部では「くじら領域」と呼ばれているようです。長さは実に3000キロにも及んでいます。
このくじら領域のすぐ隣(右側=東側)には、不思議なことに地図の中でもっとも明るい領域があります。この明るい領域の大きさはほぼ1600キロ(990マイル)もあります。黒い(暗い)領域にばかり注意が向きがちですが、冥王星の明るい領域の正体も依然として謎です。科学者の推定では、この明るい領域は氷のようなものが堆積している場所、例えば霜のようなものがある場所ではないかということです。ただ、霜とはいっても、水ではなく「メタンの霜」です。あるいは窒素、さらには一酸化炭素かも知れません。冥王星は私たちの想像を完全に超えた世界なのです。

また赤道領域をさらに東に向かいますと、黒い領域が点(というか、円)のようにみえてきます。遠くからみていたときには黒い点のようにみえていたこの部分ですが、地図にしてみるとしっかりとした円のようにみえることがわかります。また、黒い領域は4つあることも確かめられました。
それぞれの黒い領域の大きさは数百キロに及びます。
さらに、赤道領域のいちばん東(地図で)、300度〜360度付近には、白い丸で囲まれた黒い領域が存在するのがわかります。この形はどうみても「ドーナツ」ですね。
このドーナツ領域は直径が約350キロあります。地図だとわかりにくいのですが、このドーナツ領域のすぐ隣はそのままくじら領域の「しっぽ」につながっています。
このドーナツ領域は太陽系の天体でよくみられる円状の構造…例えばクレーター、あるいは火山の火口のようにもみえます。しかし、科学者はまだそれらだと断定してはいません。もっと別の可能性もあるからです。それを判断するのは、より詳しいデータが到着してからとなるでしょう。

ニューホライズンズの地質学・地球物理学・画像処理チームの副リーダーであるサウスウェスト研究所のジョン・スペンサー氏は、「私たちは、いってみればアポロ計画における『はじめて月面に降り立った宇宙飛行士』の状態にある。いろいろな美しい光景をみながら、この暗い模様や明るい模様がどのようなものであるかを想像するのはたやすいことではある。だが、まだそれらが何であるかを断定するには早すぎる。」と述べています。実際そうだと私も思いますが、それを早く知りたい、というのもまた事実です。
最接近まであと1週間を切り、冥王星への関心と再接近への興奮はだんだん高まってきています。

Google Earthで表現された冥王星の地図

Google Earthで、球体の上に貼り付けられた冥王星の地図。((c) NASA/JHUAPL/SwRI)

なお上記は、この冥王星の地図をグーグルアース(Google Earth)の球体の上に貼り付けたものです。NASAでは、ご自身でGoogle Earth上に貼り付けられる形になったデータも用意しています。以下のリンクからダウンロードしてみてください。

  • NASAの記事 
[英語] http://www.nasa.gov/feature/new-horizons-map-of-pluto-the-whale-and-the-donut
  • Google Earth用データ [英語] http://pluto.jhuapl.edu/Multimedia/Google-Map/
    ※ファイルはKMZ形式になっています。上記ページからダウンロードし、そのままGoogle Earthで開いてください。
  • ニューホライズンズ (月探査情報ステーション)
    https://moonstation.jp/ja/pex_world/NewHorizons/