NASAが6月に打ち上げた月探査機「エルクロス」に不具合が発生していることがわかりました。
8月22日(アメリカ現地時間)朝に探査機と行った通信の際、異常が発見されました。
異常を起こしたのは、探査機に搭載されている慣性基準装置(IRS: Inertia Reference System)で、衛星の姿勢制御システムに対して、衛星の正しい姿勢を伝えるための情報を提供します。
ところが、このIRSが故障したため、探査機の姿勢情報は、星を元にして位置を割り出すスタートラッカーという装置に頼らざるを得なくなり、そのため、姿勢を制御する目的で余分な燃料を消費することになってしまいました。
但し、現在のところ、探査を遂行するためには十分な姿勢制御用の燃料は残っているということです。
エルクロスの探査運用チームは「ミッション非常事態」を宣言し、衛星通信用に、アメリカの深宇宙ネットワーク(DSN: 月・惑星探査機と地球との交信に使われる地球規模のNASAの通信ネットワーク)を優先的に割り当ててもらい、IRSを再起動することで燃料消費を押さえることに成功しました。また、地上との通信ができない間にIRSに問題が起きた際にも対応できるようなプログラムも導入しました。今のところ、IRSには問題が起きていません。
現在チームでは、問題の所在と解決方法について、IRSの開発会社とも連携して調査検討を行っています。また探査責任者は、10月9日午前4時30分(アメリカ太平洋時間。日本時間では午後8時半)に予定されている、月の南極への衝突は予定通りに行えるという見通しを持っています。
・LCROSS (NASA: 英語)
http://www.nasa.gov/LCROSS
・ルナー・リコネサンス・オービター/エルクロス (月探査情報ステーション)
http://moon.jaxa.jp/ja/topics/LRO/