きっかけは2005年11月25〜26日、「はやぶさ」の小惑星イトカワへの2度めのタッチダウンのときでした。
それまで、タッチダウンのテスト、第1回のタッチダウンと、土・日の夜の徹夜が連続していて、スタッフの疲労度は極限に達していました。しかも、2度めのタッチダウンはサンプル回収の最後のチャンス。この夜に、スタッフはみんな賭けていました。
そんな中、ブログで全世界に向けてこの歴史的タッチダウンの状況を伝えるという役割を担っていたのが、齋藤潤さん(当時・「はやぶさ」の理学カメラ主任責任者。現・鹿島建設技術研究所)と、寺薗(当時・JAXA広報部・「はやぶさ」広報チーム、現・会津大学/月探査情報ステーション編集長)でした。
重要な夜の仕事を貫徹すべく、この2人がそれぞれブログ作業スペースに持ち込んだのが、10本入りの「リポビタンD」の箱でした。これは別に2人が示し合わせて買ってきたわけではなく、本当にたまたま2人とも同じものを買ってきていたのです。
そして、疲労度極限の徹夜の中、リポビタンDを飲み、その瓶が増えていく様子がブログの写真に映りこみました。そうすると、ネット上で「あの瓶は何だ?」「あいつらは何をやっているんだ!?」といった話が巻き起こり、重要なミッションそっちのけでネット上で大きな話題になりました。中にはタッチダウン前にパロディ動画や画像を作ってしまう人も出る始末でした。
こうして、リポビタンDを飲み干して伝えたタッチダウンは、日本の宇宙開発史上に残る大快挙となりましたが、その一方で、リポビタンDと宇宙とをたまたま結びつけてしまったということになったのです。しかしそれ以来、リポビタンDは「宇宙開発公式ドリンク」などと宇宙開発ファンの間で呼ばれ、関連グッズや動画、静止画が出回るなど、宇宙開発の現場には欠かせないものとなりました。
現在では、大正製薬さんは月探査情報ステーションや、はやぶさ帰還後の2011年に期間限定で開設された「はやぶさi」のパートナーになっていただくなど、宇宙開発や月・惑星探査と緊密な縁で結ばれています。「はやぶさ」がつないだ不思議な縁が、こうやっていまでも続き、宇宙開発を支え、発展させていく力になっているのです。
※【ご注意】リポビタンDの用法・用量は「15歳以上、1日1本」です。