上弦の月、下弦の月の見分け方として、しばしば登場するのが、月の明暗境界の(弓に模した場合の弦の)部分が、西の空に沈むときに、地平線に対して上にあるか、下にあるかという判断です。
しかしながら、これは後世に便宜的に導入された一種の覚え方で、もともとの意味とは全く違います。

かつては月を基準とした太陰暦という暦を使っていました。その当時は、たとえば3月3日というのは、月が新月から数えて三日目であり、かならず西空には三日月が見えていました。十五夜というのはまさに15日目であり、満月が東から上ってきます。ですから、月そのものが暦の「月」の起源になっています。
さて、こういった暦では、その月の前半を上、半ばを中、後半を下と言っていました。現代で言う上旬、中旬、下旬ですね。また、ちょうど上旬に当たる7日頃と、満月を過ぎた下旬に当たる21日頃には、月の形が半月形になり、いわゆる弓を張ったような形という意味で「弦」と呼ばれることになります。(といっても、弦という言葉はかなり古くから、それだけで半月を意味しますので、弓が先なのか、月が先なのかわかりませんが…)

いずれにしろ、これらの二つが結びついて、上弦の月、下弦の月と命名されたと考えられています。



上弦の月(撮影: 白尾元理)
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この写真は白尾元理様のご好意により、掲載させていただいております。
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