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ご承知のことと思いますが、月の起源説には、以下の3つがあります。

  • 捕獲説…月は地球に捕獲されたという説
  • 分裂説…月は、地球から飛び出してできたという説。
  • 双子集積説…月は地球の回りで、地球と同時にできたという説。

しかし、これらの説にもいろいろと問題点があります。

まず捕獲説では、地球に何らかの天体が飛んできて、それを捕獲するということは確率的にもきわめてあり得ないことです。また、月の物質は地球の物質とよく似ています(いろいろな元素の同位体比が地球のものと極めて近いのです)が、それを説明できません。
分裂説では、月ができた当時には地球の自転が相当に早くなければ、地球から月が「飛び出す」ということはあり得ません。そのように自転を速くする機構も、またそのような速い自転を現在のように遅い自転にまで減速させる機構も、考えつくのは困難なことです。
双子集積説では、地球と月の運動を説明できないという問題があります。
地球と月は互いに公転していますので、その回転の運動量(各運動量)と呼ばれる量を持っています。地球と月の角運動量はかなり大きいのですが、たとえば小さな天体が集積してできたとすると、そういった小さな天体はランダムにぶつかってきますから、角運動量は相殺されて少ない値になってしまうという問題があります。同時集積では、角運動量が現在のような値になることが説明できないのです。

こういったことから、それらの説に代わる新しい月の形成の考え方が必要になってきました。そして、その説は上で述べた問題点を、すべて説明できなければなりません。

4つ目の説、そして現在最も有力とされている「巨大衝突説」は、46億年前、できかけの地球(原始地球)に、火星くらいの大きさの天体(巨大微惑星)が衝突し、その飛び散った物質が急速に集積して、月ができたというものです。

まず、もともとの物質が地球ですから、地球と同じような物質でできているという点は問題ありません。
さらに、月の物質に見られる「揮発性元素が少ない」「月の岩石は地球のマントル物質と類似している」という特徴も、衝突によって地球のマントルが剥がされて、それが月の物質を基本的に形作ったということで説明ができます。
巨大衝突説では、分裂説のようなことを考える必要がありません。また、上の角運動量の問題については、巨大衝突によってその天体から角運動量がもたらされたと考えれば、地球と月の大きな角運動量も問題なく説明されます。

問題は、例えばそのような巨大衝突が起こった後、月の集積のようなことが起きるかどうかですが、これも最近になって、東京工業大学の井田茂氏や国立天文台の小久保英一郎氏によるシミュレーション計算により、巨大衝突後、月が非常に急速に形成される(早ければ1ヶ月程度で集積ができる)ことが証明されました。

今のところ、月の特徴を全てよく説明できるという意味で、巨大衝突説が月の起源として最も有力とされています。しかし、そのような衝突の後が月や地球に(地形として)残っているわけでもありませんし、月の組成にしても、アポロが持ち帰った岩は月の本の、ほんのごくわずかな部分に過ぎません。
その他にも、例えば月のコアの大きさなどが巨大衝突説が正しいかどうかを決める有力な手がかりになります。もし月がマントルのような物質からできた(=巨大衝突により月ができた)とすれば、月を作った材料は鉄などの金属が少ないことになります。
こういった物質は、巨大衝突が起きたときには既に地球のコアとして地球内部に入っていたはずですから。そこで、もしコアの大きさが小さければ、巨大衝突説に有利ということになります。日本の月探査「かぐや」計画をはじめとする世界の月探査計画で、月全体の組成が明らかになれば、月がどのようにしてできたか…月の起源にかなり迫ることができるはずです。


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