2010年3月1日~5日、アメリカ・テキサス州ヒューストン近郊のザ・ウッドランズで、第41回月惑星科学会議 (LPSC: Lunar and Plantary Science Conference) が開催されました。
このLPSCは、世界の月・惑星科学の中で最大、かつ最も権威ある学会として、過去40回にわたって開催されてきています。場所がヒューストンなのは、かつてこの学会がアポロ計画の研究成果を発表する場として開催され、ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターが月の石を保管するなど、アポロ計画で重要な役割を果たしたことに由来しています。
会議が大きくなったことから、昨年からヒューストンの北にあるザ・ウッドランズに会場を移しています。ここでの第2回目の会議の様子、今回は「ポスターセッション」と呼ばれる発表の様子を中心にレポートします。

※ポスターセッション…
学会発表の形式の1つ。通常のように、スライドを表示させながら講演をする方式(口頭発表)とは異なり、発表内容をあらかじめ印刷した「ポスター」と呼ばれる紙(またはスライドを印刷した紙)をボードに貼り、発表者はその前に立って説明する。聞き手は興味あるポスターがある場所に立ち寄り、発表者から説明を受けたり、ポスターをみることによって内容を理解する。ただ、発表者が常にその場にいると時間がかかるため、時間を限って発表者がポスター前にいていつでも説明を受け入れるようにするのが一般的である。このような発表、また発表時間を「ポスターセッション」(特に、発表者が必ずいなければいけない時間を「コアタイム」)という。
口頭発表に比べ、多くの発表を同じ時間で行えるため、最近では発表が増加の一途をたどる大きな学会においてこの方式がよく用いられている。

■ 参考リンク
・ 第40回月惑星科学会議 (編集長が行く)
・ 第39回月惑星科学会議 (編集長が行く)
・ 第41回月惑星科学会議のサイト (月惑星研究所・英語)

会場の正面 今年も会場は、ザ・ウッドランズの中心部にある、「マリオット・ホテルズ・アンド・コンベンション・センター」という、ホテルと会議場が一緒になった建物です。ホテルの回りにはモール(ショッピングセンター)やレストランなどもあって、歩くのにもいい場所です。ヒューストンというと何でも車で動くというイメージがあるのですが、この街はそれとはちょっと違うようです。
上の写真のドアを入ったところの会議場の入口です。写真右手のエスカレーターを上っていくと、口頭発表などが行われるメインの会議場がある4階に行くことができます。また、この入口の右側(写真には写っていません)は、このあと述べるポスターセッションの会場となっています。この入口はまたラウンジのようにもなっており、発表の準備をしたり、内容について議論したりする人がたくさんおりました。 会議場入口
オープニングパーティ 会場の外…というか、会場の廊下で開かれたオープニングパーティー。これは、学会が始まる前日、日曜日の夕方に開かれたパーティーです。ものすごい数の人が集まっていて、身動きするのもたいへん。人をかき分けて多くの研究者に会い、再会を喜び合いました。
学会会場に置かれている無料の配布物。ミッションの宣伝などのために配布しているものもあれば、学会非公式のパーティーのお誘い、中には求人案内まであったりします。正面に置かれている大きなポスターは、「かぐや」のハイビジョンカメラの映像をもとに作ったもの。海外研究者には好評で、あっという間になくなってしまっていました。 無料の配布物
ポスターセッションの時間 LPSCでのポスターセッションは火曜日と木曜日、午後7時から午後10時までの3時間。学会自体、朝8時半から発表があります。従って、全てに出ていると、朝8時過ぎから夜10時過ぎまで学会会場にいることになります。皆さんものすごいハードスケジュールをこなすことになります。これは始まる前に撮影した入口の写真。
ポスターセッション会場の入口に立てられていた木星探査ミッション「ジュノー」(JUNO)のパネル。木星本体とエウロパの探査を行います。月探査情報ステーションではまだ取り上げていませんが、なるべく近いうちに取り上げようと思っています。 木星探査のパネル
LRO写真 ポスターセッション会場に置かれていた、ルナー・リコネサンス・オービターが撮影した画像のプリントアウト。あとの写真で見るとよくわかりますが、この会場、かなり広いのです。その会場の手前から向こうの方まで、ずーっと写真が続いていることがわかります。これだけ高精度なデータが得られているというわけですね。
ポスターセッション会場の写真。ここは本来は大きな宴会場のようなところですが、ここを2つの区域に分けて開催しています。この2つの区域の間に企業や団体の展示ブースがあります。写真はこの展示ブース。これだけみるとゆったりしているようですが、実際にはかなりの人が行き交っています。 ポスター会場
ものすごい数のポスター いかに今回ポスターセッションに掲示されたポスター発表の数が多いかを示す写真です。これは、ポスターを貼る場所の割り当てを示している写真なのですが、番号は550を越えています。つまり、この会場には550以上のポスター発表が同時に行われているということになります。3時間で1つ1つ聞いていったとしたら1か所あたりたった20秒ほどしかありません。そこで、大体の人は興味ある発表をあらかじめ選び、そこに行って発表者と議論することになります。
夜のポスターセッションに必須なのは「燃料」。すなわち、アルコールです。昨年と同様、会場ではビールやワインなどが無料で振る舞われていました。質問する方も発表する方もアルコール片手ですから、みんな舌がなめらかになって、議論も弾むというわけです。中にはポスターの前ではなく、会場の外に出て議論をしている人もいましたが…(とにかく会場は人いきれで暑かったので)。 燃料補給
ポスターセッションの様子 ポスターセッションはこのような風景です。ポスターが貼ってあるところに質問者がいて議論を行っている様子がわかります。私も発表をしていたのですが、3時間、立ちっぱなしでの英語での質疑応答というのはなかなかハードではありました。でも、いろいろな方とお話しする中で、中には研究の意義を高く評価して下さる方もいて、たいへん貴重な経験でした。