火星へと向かう人類

火星基地 1997年7月、アメリカ航空宇宙局(NASA)の探査機「マーズパスファインダー」が火星への着陸に成功した。遅れること数か月、同じくNASAの「マーズグローバルサーベイヤ」も火星に到着した。2つの大きな出来事以降も、アメリカとロシアを中心に火星探査計画は着々と進められている。日本でも文部省宇宙科学研究所が火星探査機「プラネットB」の打上げを予定している [注1] など、初めて探査機「バイキング」が火星に着陸した1976年以来、2度目の火星ブームといっていいくらい、世界は火星一色だ。

 距離的に地球に近く、また長らく火星人の存在が信じられていたこともあって馴染みの深い惑星だ。また、重力は地球の3分の1、半径は2分の1、真夏には17℃にも達する温暖(といっても平均するとマイナス50℃前後と考えられているが)な気候、宇宙線を弾き返す大気の存在など、性質的にも地球に似ているという事実がある。人類の目が火星へと向かうことは納得できるだろう。

月、火星の発展と次のステップ

 月面基地と同様に、火星基地についても各国で構想が練られている。火星の極地に存在する氷を溶かし、植物を増殖させて酸素を作ってしまおうというアイディアすらあるほどだ。NASAやロシアは、いまから20年~30年後をめどに人類を火星に送り込むプランを発表しており、実現すれば月面への第一歩以来のビッグニュースとなることは間違いない。
 費用はかかる。技術的な課題も多い。が、決して不可能ではないところまで、人類の科学と宇宙に対する意識は進んでいる。

 火星到達、火星基地建設をクリアした暁には、そこでも都市機能やビジネスが誕生し、次の段階は他の惑星、あるいは外宇宙ということになるのだろう。

月をふるさとと呼ぶ人の誕生

 もちろん、人類が火星に到達し、その次の段階に進むまでにはいくつものステップが必要となるだろう。火星基地建設のために月面基地で得たノウハウを使ったり、月面基地をベースとして火星探査を進めたりといった計画が採用されれば、月面の探査・開発が優先課題となる。実際、セレーネ計画の目的がそうであるように、惑星探査や軟着陸などの技術的ノウハウを得るのに、月ほどふさわしい天体は他にないのだ。
 やはり月こそが、さらに遠くの世界へと続く最初の一歩である。日本の2つの月探査計画、ルナーAとセレーネに、各国も続くことになるだろう。そして、この連載で予測してきたように、基地が作られ、人が送り込まれ、生産活動が営まれるようになり、ビジネスが派生し、観光地として認識されるまでになる。

 そうなれば、月で恒常的に生活する人、月で誕生し、月で一生を終える人も出てくることだろう。

 まだ幾らかの時間的猶予はあるが、その日は、確実にやってくるのである。

終り

[注1] プラネットBは1998年7月に打ち上げられ「のぞみ」と命名されましたが、電源系の不具合により、2003年12月、火星周回軌道への投入を断念しました。詳しくはこちらをご覧下さい。

参考文献:岩田 勉著
2020年 日本人の月移住計画は もう始まっている

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このページは、1997年4月から1998年3月まで宇宙開発事業団(当時)の機関紙「NASDA NEWS」に連載された、「月がふるさとになる日」を移設したものです。記述内容に当時の状況を反映したものがありますが、オリジナル性を重視し、そのまま掲載しています。