どうも、お久しぶりです。第1話が出てから実に2年近くになってしまいました。定期的とはいきませんが、細々と(?)更新をしていきますので今後ともよろしくお願いします。

さて、第1回目では日本の神話における「月の神様」を紹介しました。この流れでいくとやはり次は「外国」の神話における月の神様でしょうか。有名なところではギリシア・ローマ神話でしょうが、これは比較的皆さんご存じでしょうから触れずにいきましょう。


まずは、同じヨーロッパ圏でバイキングで有名な北欧。
といっても、ここでは太陽や月の神格をもった特定の神様はいないようです。北欧神話では太陽や月は地の果てから飛んできた火花や燠(おき)をつかまえて天空に据えたものとされています。
また、その運行をしているのも神ではなく、神に連れていかれた「太陽(女)」「月(男)」と名付けられた人間ということになっています。北欧では月に限らず、天体に結びつけられた神様はいないようです。

次は、古代文明発祥の地のひとつであるエジプトをみてみましょう。
エジプトの場合は「ラー」と呼ばれる太陽神と数々の動物(と鳥)神が知られています。この中で、「月」に結びつけられているのは「トト」神というトキの格好をした神様です。トトは知恵や学問、記録の神として知られています。
「計算」を司り、「天文」や「暦」を作ったということで月と結びつけられていると考えているこのトト神ですが、月の神格は別の神から奪ったという話になっています。
この奪われてしまったほうの神様は「ホンス(またはコンス)」と云う男神で、もともとはテーベという地方で信仰されていた地方神であったのですが、だんだんとエジプト全土に勢力を持つようになり、一部遺構では「ホンス神殿」というものが見つかるなどもしています。
このホンス神ですが、双六(日本の双六とは違うようですが)に負けて月の神格をトト神に譲ったとされています。ちなみに、このホンス神の方は後に「病気やもののけ祓いの神」としてエジプトの国外にも名を知られるようになりました。

他の古代文明の発祥の地であるメソポタミア地方はどのようになっているでしょうか。
この地方では様々な民族が興亡を繰り返しましたが、初期のシュメール人の神様の中には天体の神格をもった神様として月神「ナンナ(またはシン)」、太陽神「ウトゥ(またはシャマシュ)」、金星神の「イナンナ」という神がいます。このなかで、太陽神、月神は男神、金星神が女神です。
エジプトは太陽神が王権と結びついていたものと対照的に、こちらでは月神の方が太陽神よりも格付けが上となっており、月神が王権の附与者として信仰され、月神殿が建立されていました。
「ナンナ」が自然を支配する大いなる神であり豊穣をもたらすものとされていたのは、シュメール人が太陰暦を用いていたこととも関係しているのかもしれません。この後天体神は増していき、のちのバビロンに時代が移ってゆくと主神はマルドゥーク神(もとは木星神)となり、1月を30日とする暦に変わっていきます。

インドではどうなっているでしょう。インドも時代によって様々な神が存在してきました。
インドの「ヴェーダ」の中で月の神として現れるのは「ヴァルナ」と呼ばれる神です。元々は宇宙の君主であったのですが、神格が分離された際、夜の護衛職たる「月の神」へと格下げ(?)をされてしまいました。
時代が経って「インドラ」を頂点とする神の形になると月の神は「ソーマ」と云われる神となります。これは、「ソーマ酒」としてよく聞かれるもので、インドラに活力を与える生命の源のようなものです。これが転じて「ソーマ」はあらゆる病気を治し、富を与える「神」となりました。
またソーマの作り方が、圧搾をして液を濾しとる方法によることからこの「濾し器」は天空そのもの、そしてその液である「ソーマ」は雨を象徴する「水の神」となり、月が水の調整(潮汐現象)に関係することから「月の神」と結びつくことになったようです。
後には、前者の「生命の神」の部分が発展して薬草や病気の神としてまつられています。実は「ソーマ」が月の神となる以前に「チャンドラ」と呼ばれる月の神がいたのですが、いつしかこれらが同一化し「チャンドラ」は「ソーマ」の別名と云うことになってしまいました。ちなみに、インドでも月の神は男神です。

最後は中国です。中国の創世記では日本の神話と同様「太陽」と「月」は「盤古(ばんこ)」という神の左目が「太陽」、右目が「月」として生まれてきたとしています。しかし、特に神様としての特別な名前は無かったようです。
ちなみに「日本の神話と同様」と書きましたが、神話の研究ではこの中国の創世記がかなり日本の神話に影響を及ぼしていると考えられています。では、中国で月に関連づけられている神様はいないのかというと、「西王母」という神様がそれにあたります。西遊記や封神演義にでてくる有名な女神ですね。
この神様は西の仙境といわれていた崑崙山(こんろんさん)(ちなみに東は蓬莱山-ほうらいさん-)の主人で、兎(玉兎)を従えています。かつては疫病や刑罰をつかさどる神様だったのですが、後に不老不死の薬や桃を有する、長寿の神様と変化しました。西王母が「月」の神として結びついたのは中国の陰陽思想と結びついているようです。つまり「太陽」「男」「東」を「陽」、「月」「女」「西」を「陰」として、それぞれの方角にある高い仙山に住まう神に振り分けたものと考えられます。
ちなみに、西王母の対となる太陽神は「東王父(または東王公)」と呼ばれますが、一説ではもとはこちらも東王母であり、陰陽の思想が強くなるに従い母→父に変化していったとも云われています。


 と、主だった国の月の神様をざっと眺めてみましたが、実際には同じ国の中でも時代によって変遷がありここでは代表的な例を挙げているに過ぎません。しかし、たいがいの場合が「月」というものが「暦」や「水」とつながり、それが「数」「学問」や「生命」「生産(豊穣)」へと転じていっているようです。中にはそれが「医学」などまで変化している場合もあるようです。月神が「男」か「女」かということも地方や時代(または解釈)によっても変わるようです。興味があれば、もっと調べてみると色々と判るかもしれません。もし、皆さんが調べて判ったことがあれば教えてください。
  と、いうことで今回はこの辺で。

【疋】

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《参考文献》
北欧神話 K・クロスリィーホランド著 山室静他訳 青土社
インド神話 ヴェロニカ・イオンズ著 酒井傅六訳 青土社
占星術の起源 矢島文夫著 筑摩書房
日本の神々の辞典  薗田稔・茂木栄監修 学研