アポロ宇宙船の概要

■複雑ではあるがコスト・能力で有利な方式が選ばれた

人間を月に送り込み、無事に地球へと送り返す…。この目標のためには、人間を乗せる乗り物、宇宙船の開発が重要となります。
アポロ計画では当初、月までの飛行についていろいろな案が検討されていました。その中には、1つの宇宙船で、月まで行って着陸し、再び離陸して地球へ帰還するという案もありました。しかし最終的には、3つの部分からなる宇宙船を開発し、月着陸は着陸船が分離するという形が取られました。この方式は分離やドッキングを何回も行うことになり複雑なだけでなく危険性もありましたが、打ち上げに必要なロケットの能力を低く抑えることができ、費用も抑えることができるという利点がありました。また、アポロ13号では着陸船が「救命ボート」として機能したように、緊急時の対応が行いやすいという副次的な利点もありました。

■司令船・機械船・着陸船の3つの部分からなる

アポロ宇宙船は、司令船、機械船、着陸船の3つから成り立っています。

  • 司令船 (コマンド・モジュール=Command Module: CM)
    宇宙飛行士3人が乗り組む、メインとなる宇宙船です。カプセル型の小さな宇宙船で、居住性という意味では優れたものではありませんでしたが、月に行って戻ってくるという目的を果たすための機能を優先させています。司令船は機械船とドッキングした形で飛行し、月上空で2人の宇宙飛行士が着陸船に乗り移ったあと、着陸船が分離し、司令船は宇宙飛行士1名を乗せて月上空を周回します。月でのミッションが終了すると、着陸船は再び司令船と月上空でドッキング、地球帰還軌道へ入ります。そして地球の大気圏突入直前に機械船を分離し、司令船だけが大気圏に突入、最後はパラシュートを開いて海に着水します。
  • 機械船 (サービス・モジュール=Service Module: SM)
    人間が生きていくためには、空気(酸素)や水などが必要です。こういった、人間の生命維持に欠かせない空気や水を供給すると共に循環させたり、必要なエネルギーなどを供給するための宇宙船が機械船です。機械船は司令船の後ろにくっついている円筒形の宇宙船で、最後部には軌道変更などの際に使うエンジン(小型ロケット)が搭載されています。司令船はアポロ宇宙船の飛行の大部分を司令船と合体したまま飛行し、最後、地球帰還直前に司令船から切り離されて破棄されます。
  • 着陸船 (ルナー・モジュール=Lunar Module: LM)
    月着陸という、アポロ計画でもっとも重要なミッションを達成するための宇宙船が着陸船です。文字通り、月に着陸するための宇宙船ですが、それだけではなく、月面から月上空に帰還する機能も持ちます。月に着陸するための足(着陸脚)を備えた下部、宇宙飛行士が月面で滞在し、最後は帰還する機能を持つ上部とに分かれます。着陸船は月に向かう途中でロケットから引き出されたあと司令船とドッキングし、月上空で2人の宇宙飛行士が着陸船に乗り移ったあと、月面へと降下、着陸します。月面での活動が終わると、上部だけが切り離されて月面から離陸、再び司令船へとドッキングします。2名の宇宙飛行士は司令船へと乗り移り、そのあと着陸船は切り離されて破棄されます。

アポロ宇宙船の概要

寸法 (17号) 直径3.9メートル×高さ3.6メートルの円錐形状(司令船)
直径3.9メートル×高さ4.6メートルの円筒形状(機械船、ノズル含まず)
幅(脚対角)9.5メートル×高さ7メートル(着陸船)
質量 (17号) 5.843トン(司令船:打ち上げ時)
24.5トン(機械船:打ち上げ時)
16.4トン(着陸船:打ち上げ時)
推進系 A50/NTO2液式 91840ニュートン(サービス・モジュール)
A50/NTO2液式 4700~43900ニュートン可変(着陸船降下)
A50/NTO2液式 15500ニュートン(着陸船上昇)
姿勢制御用スラスタ
その他 ルナー・ローバー(月面車)搭載(アポロ15~17号)
司令船は地球大気投入後はパラシュート降下
着陸船は降下用と上昇用に分離
着陸脚による接地
着陸船は司令船+サービスモジュールと地球軌道上でドッキング

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