NASAの惑星探査機、ボイジャー1号が、我々の太陽系と恒星間空間との間にある、いわば「太陽系の縁」の新たな領域に入ったことがわかりました。ここ数年、ボイジャー1号から得られているデータによって、この領域は探査機にとっての「地獄」のような場所であることがわかってきています。太陽風は恒星間空間からの圧力によって弱められ、太陽の磁場はこのあたりで重なり合うようになり、太陽からの高エネルギーの粒子が、この領域から流れ出しているのです。
1979年に打ち上げられ、現在は太陽から離れる方向へ飛行を続けているボイジャー1号は、すでに太陽から180億キロ(120天文単位)という途方もない距離まで離れています。しかしそれでもまだ太陽系の範囲内であり、恒星間空間に出たというわけではありません。最近のデータでは、磁力線の方向は変化しておらず、現在のところはまだボイジャー1号は太陽圏(太陽からの影響力が及ぶ範囲)内にいると考えられています。いまのところ、観測データからは、ボイジャー1号が太陽圏の縁にいて、このまま恒星間空間へと入るのかどうかということははっきりとはわかっていませんが、その時期は数ヶ月、あるいは数年先であろうとは考えられています。
現在開催されているアメリカ地球物理学会の年次総会で、ボイジャー探査機に搭載されている低エネルギー荷電粒子測定装置、宇宙線観測システム、及び磁力計の観測結果が公開されました。
すでに研究者は、ボイジャー1号で観測されている太陽風の外向きへの速度が、2010年4月時点でゼロになっていることを見いだしており、これが新しい領域へ入ったことを示唆するものであることを発表しています。さらに今年の春から夏にかけて、ボイジャー探査機自身の向きを変えて、太陽風が別の方向に向かって吹いているかどうかを確認しようとしましたが、結果としてはそういう事実はみつかりませんでした。いまボイジャー1号が旅をしている領域は、ちょうど太陽圏と恒星間空間の間にある、いわば「無風帯」のような領域のようです。
また、ボイジャー1号搭載の磁力計が、ここ数年、磁場の強さが2倍になるような現象をみつけています。これは、ちょうど高速道路の出口でスピードを落とした車がずらっとつながるのと同じ現象で、恒星間空間からの圧力が、このような磁場の強さの増加を生み出しているのではないかと考えられます。
ボイジャー1号はまた、太陽系の内外から発せられるエネルギーを持った粒子の強さを調べています。2010年の中頃までは、太陽系の内側から出てくるエネルギー粒子の強さはほぼ一定でした。しかしそれ以降、内側からのエネルギー粒子の強さは徐々に減少しており、恒星間空間へと流失してしまっているかのようにみえます。現在では、これまで5年間に観測されてきた値の約半分ほどにまで減ってしまっています。
一方で、搭載観測機器では、おそらく銀河のどこかからやってきたと思われる、100倍もの強いエネルギー粒子の流れを観測しており、これもまた、ボイジャー1号が太陽系の縁にたどり着いているということを示す証拠と受け取られています。
低エネルギー荷電粒子測定装置を担当しているジョンズホプキンス大学のロブ・デッカー氏は、観測されている太陽風の速度が非常に低くまた不安定になってきていると述べており、また、最近の観測データの中には、太陽風が逆方向に吹いていることを示すデータさえあったと述べています。その上で、「ボイジャー1号は現在、まったく新しい領域を飛行している。科学者はこれは境界付近の停滞域であると考えてきたが、現在までにそこを脱出したのかについてははっきりしない。」と述べています。
また、ボイジャー計画のプロジェクトマネージャーであるカリフォルニア工科大学のエド・ストーン氏は、「太陽系の外側のところで、この太陽圏がどのように押し戻されているのかについてわかってきている。恒星間空間がどのようなものであることを知るのにそう長い時間はかからないだろう。」と語り、ボイジャー1号が近いうちに、太陽系を脱し、惑星間空間へと入るとの見通しを明らかにしています。
・NASAのプレスリリース (英語)
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2011/dec/HQ_11-402_AGU_Voyager.html