7月14日に冥王星に最接近する予定の冥王星探査機ニューホライズンズですが、まだかなり距離があるものの、写真による観測はすでに開始しています。その写真の解析から、冥王星に極冠(極地域にある氷あるいは雪の層)が存在する可能性が明らかになりました。
下の2枚の写真(実際には、複数の写真をつなぎあわせたアニメーションとなっています)は、4月中旬に、冥王星から約1億1300万キロの地点から撮影されたものです。ニューホライズンズに搭載された「広範囲カメラ」(LORRI)によって撮影されています。各画像は、画像デコンボリューションという手法によって処理され、下のような画像にまとめられました。
この画像では、冥王星本体と、その周りを回る大きな衛星カロンが写っています。カロンは冥王星の周りを約6.4日で公転しています。冥王星を中心として処理したアニメーションと、冥王星・カロン共通の中心(重心)を中心として処理したアニメーション2種類が公開されています。
問題は、右下にある、3倍ズームにされた冥王星です。これをみてみますと、冥王星が自転するにつれて表面の濃淡がはっきりと変化している様子がわかります。また、上のアニメーションをみていただくと「Rotation Axis」という表示がありますが、これが冥王星の自転軸です。この方向の冥王星の拡大画像をみると、自転軸の方向…つまり、極の部分に明るい白い部分が存在するのがわかります。
科学者は、これは極地域に、火星のような極冠が存在していることを意味しているのではないかと考えています。火星の極冠の場合は水の氷でできていますが、この冥王星の「極冠」は、おそらくは窒素の氷(!)でできているのではないかと考えられます。
また、冥王星には5つの衛星が存在することがわかっていますが、カロンは捉えられているものの、他の4つの衛星については、今回の写真の露出時間(10分の1秒)では光が弱すぎて捉えられていません。
NASAの科学ミッション部門副本部長のジョン・グランズフェルド氏は、「冥王星に近づくにつれ、私たちはこの天体、そして衛星についての謎を解明するための科学の偉大なる旅に進もうとしている。今回の極冠のような明るい模様も解明すべきものの1つだ。今後冥王星に近づくにつれ、ニューホライズンズから送られてくるデータはよりエキサイティングなものとなるだろう。」と述べています。
ニューホライズンズ計画のプロジェクトマネージャーであるサウスウェスト研究所のアラン・スターン博士は、「9年以上の飛行によって辿り着いた冥王星は、驚くほど素晴らしい姿を私たちの前に見せている。地球からみると単なる光の点に過ぎないこの天体が、今や私たちの前にはっきりとした形を持つ天体として姿を現している。今回の写真は冥王星についてはじめて私たちが手にした写真であるが、すでにこの時点で多くの発見を得ることとなった。」と、いよいよ近づいてきた再接近を前にもう興奮を抑えられない、という様子です。
- ニューホライズンズチームのページ (ジョンズホプキンス大学応用物理研究所)
https://moonstation.jp/ja/pex_world/NewHorizons/