待ちに待っていたものが届きました。そして予想通り、私たちを驚かせるに十分なインパクトがありました。
NASAは16日(アメリカ現地時間)、ニューホライズンズが冥王星最接近を果たす前に撮影した、冥王星の非常に詳細な写真を発表しました。

冥王星赤道付近の詳細写真

冥王星の赤道付近を撮影した詳細な写真。谷や山のような複雑な地形がみえる。山の高さはもっとも高いもので3500メートルほどと推定される。(© NASA/JHUAPL/SwRI)

「まさにホームランだ!ニューホライズンズはすでに驚嘆すべき成果を送ってきている。暗い表面はきらびやかな感じさえ伺わせる。冥王星、そしてその衛星カロンの写真は目が覚めるほど素晴らしいものだ。」ニューホライズンズのプロジェクトマネージャー、アラン・スターン氏も、手放しの喜びようです。
その気持ちは、私(編集長)もかつて「はやぶさ」のカメラチームにいた際、小惑星イトカワの最初の写真をみて興奮に包まれたことを思い出すと、本当に納得できるものがあります。

今回NASAから公開された写真は、冥王星の赤道付近を捉えたもので、もうすっかり有名になった「ハート型地形」の根元部分です。この写真には高さが最高3500メートルもあると推定される山も写っています。
同じように氷でできている天体としては、木星や土星など、外惑星の衛星などもありますが、これらの天体は表面は比較的なだらかで、このように山や谷などがあるゴツゴツした地形ではありません。
冥王星は比較的小さいですから、形成されたときに物質が集まって発生する重力による加熱はそれほどなかったと思われます。従って、このようなダイナミックな地形を作り出す源となるエネルギーは、別のものを考えなければいけません。

「私たちが見てきた太陽系の天体の地形でももっとも若いものの1つだ。」(ニューホライズンズの地質学・地球物理学・撮像担当チームで、NASAエイムズ研究センターの科学者ジェフ・ムーア氏)

ムーア氏が述べるように、この地形は非常に「若い」(最近にできた)ものです。推定ではおそらく1億年よりは新しいのではないかと考えられます。
月の海(黒い部分)ができたのが約40億年前、月のもっとも新しいクレーターが約10億年前とされていますから、この地形がいかに若いものかがわかるでしょう。しかも、これは冥王星という比較的小さな天体の表面にある地形なのです。
今回の写真は冥王星表面のたった1パーセントしかカバーしていませんが、これだけをみても、冥王星が地質学的に「活発」な、つまり(ひょっとすると今なお)活動的な天体である(少なくとも「あった」)ことがわかります。まさに教科書の記述がまるごとひっくり返るような大発見です。

「ほかの氷天体でもどのようなエネルギーにより活動が起きているのか、私たちは改めて考え直す必要がある。」(地質学・地球物理学・撮像チームの副リーダーである、サウスウェスト研究所のジョン・スペンサー氏)

NASA科学ミッション部門長であるジョン・グランズフェルド氏はこう述べています。「このニューホライズンズは、なぜ基礎科学研究がこれほどまでに重要なのか、如実に示しているミッションだといえよう。このミッションは9年半にわたって、世界中から、冥王星とその衛星カロンがどのような姿をしているのかという期待を一心に集め続けた。そして今日、私たちは探査のもっとも重要なタイミングで収集された貴重なデータの最初の1つを手に入れた。そして、私はこのデータが、抱き続けてきた高い期待をもはるかに超えるすばらしいものだと断言することができる。」

  • NASAのプレスリリース