本番前に調子を崩す、というのは人でも機械でもあることですが、こと探査機、それもフライバイでそばを通り過ぎるたった1度のチャンスに賭けるしかない探査機の場合には、不具合は重大な影響を与える可能性があります。

NASAは5日(アメリカ東部夏時間。以下特に断りがない場合アメリカ東部夏時間です)、冥王星に14日再接近する予定の探査機ニューホライズンズに異常が発生し、「セーフモード」という状態に陥ったと発表しました。
セーフモードとは、探査機が最低限の機能を維持している状態で、観測などはこの状態だと(電力を消費したりさらなる故障の原因となるため)不可能です。

NASAの発表によると、この故障が発生したのは4日の午後で、一時地球との通信が失われました。
通信が途絶したのは4日の午後1時54分(日本時間では5日の午前2時54分)です。その後、通信は午後3時15分(日本時間では5日の午前4時15分)には回復しました。

この間、ニューホライズンズ探査機内部のプログラムが異常を察知、自動的に予備のコンピューターに動作を切り替えました。と同時に、プログラムは探査機を「セーフモード」に設定しました。現在ニューホライズンズ探査機は、故障原因を地上で探るために必要な内部データを地球に向けて送信しています。

この故障原因を探る検討委員会が午後4時(日本時間では5日の午前5時)に開催され、故障原因の究明と回復に向けた方法についての議論が行われています。
ニューホライズンズは現在地球から50億キロも離れたところにおり、光の速度で片道4時間半もかかります。つまり、ニューホライズンズに通信を行い、その結果を得るためには、往復で9時間もかかってしまいます。このような時間と距離の壁もあり、回復には1日から数日はかかるものとみられます。また現時点では科学データの収集はできない状態にあります。
NASAでは新しい情報が入り次第随時公表するとしているので、その情報を待ちましょう。