これまでは冥王星の写真が多く、その「双子惑星」ともいえる衛星カロンの写真は小さいものばかりでしたが、NASAは13日、冥王星カロンの詳しい写真を公開しました。こちらの方も「地質学できます」といわんばかりの高精度の写真です。
この写真は、7月11日(アメリカ現地時間)に、ニューホライズンズ探査機により撮影され、13日に地球に届いたものです。
これまで冥王星の様々な地形が私たちを驚嘆させましたが、それはどちらかというと「黒っぽい」「明るい」といった濃淡部分でした。ところがカロンは、クレーターや谷のような地形がはっきりとみえるという、より「地質学のやりがいがある」天体であることがわかってきました。
写真右側には、2本の深い谷(英語では「chasm」と表現されています)が走っている様子がみえます。一見すると大したことなさそうですが、ニューホライズンズの地質学・地球物理学担当副リーダーのウィリアム・マッキノン氏によると、深さも長さもなんとグランドキャニオンより深く長いということです。
また、南極付近には、ひと目ではっきりとクレーターとわかる地形があります。このクレーターの直径はおよそ100キロメートル(英語表現では60マイル…約96キロ)で、かなりの大きさであることがわかります。また、クレーター周辺にはクレーターができた際に飛び散ったものと思われる明るい飛散物がはっきりと写っています。つまり、このような飛び散ったものが写っているということで、このクレーターが比較的最近になってできたものであることがわかります。もっとも、「最近」といってもこの10億年くらいの間ということでしょうが。
マッキノン氏によると、クレーターの底の部分が非常に暗いということは興味深いということです。1つの説明として、もともと地下部分にあった、氷よりは暗いものでできた層が、クレーターができたことにより露出したのではないかということが考えられます。カロンの表面は(おそらくは窒素の)氷でできていると考えられますので、それがみえているというのはありえるでしょう。また別の説明として、このクレーターの底を形成する物質は周りと同じように(窒素の)氷でできているものの、粒の大きさが大きいのではないかということがあります。粒の大きさが大きいと太陽光を反射する量が減るため、暗く写るというのです。この考え方ですと、クレーターが氷でできた層全体に形成され、その後再凍結した際に、大きな粒となって凍結したということになるでしょう。いずれにしても、まだその原因はまったくわかりません。
さらに、カロンの北極付近にある暗い領域も謎めいています。直径はおよそ300キロ(NASAは200マイル=約320キロと表現しています)にわたるこの領域は、どのような物質や状況なのかもよくわかりません。極冠であればかえって明るくなるはずですが、その逆となっているのは非常に不思議です。
いずれにしても、これらの謎は、これから続々と送られてくる接近時のデータによって明かされると期待しましょう。
- NASAの記事
https://moonstation.jp/ja/pex_world/NewHorizons/