NASAはこのほど、アメリカの次期有人宇宙輸送システムの検討について一定のめどに達しました。NASAのチャールズ・ボールデン長官が5月24日に発表した内容によると、この新しい輸送システムは、以前の計画「コンステレーション計画」の中核に位置づけられてた多目的輸送船「オライオン」をベースとしたもので、名前は新たに「多目的有人宇宙船」(MPCV: Multi-Purpose Crew Vehicle)と呼ばれることになりました(なお、「オライオン」の正式名称はCEV…Crew Exploration Vehicleでした)。
ボールデン長官は、「私たちは、地球低軌道を越える有人探査に取り組んでおり、さらに遠くへ向かう次世代輸送システムの開発に着手することを心待ちにしている。NASA設置法では、国際宇宙ステーション(ISS)への輸送手段を今後は民間に委ねていくことが定められており、私たちとしては深宇宙探査へと焦点を移す予定だ。重い物資を打ち上げることができる輸送手段を積極的に開発していくことで、既に契約されている検討によって開発を新しい乗り物へと順調にシフトさせていくことができる。」と語っています。
MPCVについてはロッキードマーチン社が開発に従事することになります。このMPCVは、4人の宇宙飛行士を21日間にわたる探査に従事させることができ、最終的にはカリフォルニア沖の太平洋に着水して地球に戻ることができるようになっています。与圧空間は約17.5立方メートル(619平方フィート。立方体換算で一辺約2.6メートル)の空間があり、居住空間の大きさは約9立方メートル(316平方フィート。立方体換算で一辺約2メートル)。また、スペースシャトルに比べて、打ち上げ時、帰還時について10倍も安全であるとのことです。
NASAの探査システムミッション部門の副部門長であるダグラス・クック氏は、「今回の選定は、NASAの通常のやり方での開発を行うということを意味していない。オライオンの管理・開発チームはたぐいまれなの力を発揮し、管理能力によってコストダウンへの努力、技術的な解決法を見いだしてきた。」と述べ、オライオンの開発に際してみられたコストの増加などを今回の計画では極力抑えたい方向であることを示唆しています。
・NASAのプレスリリース
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2011/may/HQ_11-164_MPCV_Decision.html
・多目的乗員輸送船 (MCPV)のページ (NASA: 英語)
http://www.nasa.gov/exploration/systems/mpcv/