多くのメディアでも報道されていますが、NASAがこのほど、新しい小惑星探査計画を公表しました。この計画は、なんと小惑星をまるごと捕獲し、地球まで持ち帰ってしまおうというものです。
報道などによると、ターゲットとなるのは大きさ数十メートルクラスの小惑星で、これを大きな袋状の物体に入れてしまい、地球近傍の軌道まで持ち帰り、そこでいろいろな科学的探査を行おうという計画のようです。

この計画の詳細についてはまだNASAから公式の文書が出ていないため、報道されている以上の情報はわかりませんが、公式プレスリリースとして、NASAの2014年度予算(アメリカの会計年度は10月開始ですので、2014年度は、2013年10月1日開始です)について言及したNASAのプレスリリース内にある文章を引用することにしましょう。

まずは、NASAの有人探査・ミッション運用担当副長官であるウィリアム・ガーステンマイヤー氏。
「今回のミッションは、小惑星を発見し、それを無人で捕獲、さらに軌道から外した上で、宇宙飛行士をその小惑星に送り込んで詳細な調査を行うというものである。本探査は、NASAが持つすべての専門的な技術を駆使して行うものである。国際宇宙ステーション(ISS)は、科学的、あるいは技術的な成果を日々生み出し、人間が宇宙空間で生きるということがどのようなことなのかをいつも示してくれているが、今回のミッションは、人類をより遠くの太陽系空間、例えば火星に送り込むために貴重な経験を提供してくれるものと考える。今回の年度(2014年度)の収支を踏まえ、我々は本計画が予算の上でも適正になるように努める。(アメリカの)2014年会計年度より、NASAは小惑星の捕獲メカニズムや、宇宙飛行士の小惑星上での探査メカニズムなどの開発に着手する。」

次に、科学担当副長官であるジョン・グランズフェルド氏。
「地球近傍小惑星を発見しその性質を見極めること、そして私たちの地球に衝突する危険がある小惑星を発見し、捕獲するのに適切な小惑星を見つけ出すということが、今回のミッションにおけるまずもっていちばん重要なステップとなるだろう。小惑星捕獲というのはなによりもまず目立つミッションであり、月遷移軌道における無人技術(ロボティック技術)と有人技術とのコラボレーションという意味でも重要である。」

さらに、宇宙技術担当副長官のマイケル・ガザリック氏。
「本ミッションは、私たちの持つ高出力太陽電力推進(編集長注: 太陽電池により発電される電力を利用したイオン推進のことか?)の開発を強力に後押しすることになるだろう。小惑星を見つけ出し、捕獲し、地球−月付近の軌道へと持ち帰るという大胆なプロジェクトは、この高出力太陽電力推進なしには実現し得ない。このテクノロジーは商用の通信衛星などにも利用されており、NASAの将来の有人・無人の深宇宙探査にも欠かせないものである。」