打ち上げから足かけ7年。水星探査機メッセンジャーは、これまで3回の水星フライバイを経て、いよいよあと1ヶ月で水星周回軌道へ投入されるところまできました。
2月17日の午後8時45分(アメリカ東部時間)には、メッセンジャーは水星軌道投入のため、スラスターを噴射し、これまで最大の軌道修正を実施します。この噴射は14分間に及び、探査機を一気に秒速862メートル減速させます。また、この噴射だけで、搭載燃料の31パーセントも消費するという、まさに探査の山場といえます。
この噴射のあと残る燃料は、出発時の1割以下というものですが、これでも将来の軌道修正に対しては十分です。
メッセンジャーが投入される予定の水星周回軌道は、近水点(水星に最も近い点)が高さ200キロ、周期が約12時間の軌道です。水星軌道投入時、メッセンジャーの太陽からの距離(つまり、太陽と水星との距離)は4614万キロ、地球からは1億5506万キロになります。
メッセンジャーの主任科学者のシーン・ソロモン博士は、「6年半の旅は長かった。しかし、最後の曲がり角にさしかかった。周回軌道への投入がもう目の前だ。チームは既に周回軌道での作業の準備を始めている。」と、周回軌道投入への期待を語っています。
既に技術者は、水星軌道投入に備えて、その際に使われるアレイアンテナのテストを行っています。軌道投入中は、メッセンジャー探査機の姿勢は必ずしも通信に適した向きになるわけではありません。そのため、その間は地球との通信電波が弱くなってしまいます。このため、この軌道投入時のメッセンジャーとの通信には、アメリカ・カリフォルニア州ゴールドストーンにある、直径70メートルと34メートルの2つのアンテナが使用されます。
このようなアンテナの使い方はあまり例がなかったということですが、通信担当の技術者によると、リハーサルは無事成功したとのことです。
メッセンジャーは、1年半前に最後の深宇宙軌道修正を完了し、それ以降は軌道投入と軌道での運用へとチームの体制が変わってきています。どのような観測を行うべきか計画が立てられており、それについてはチーム内から外部研究者を含めた大がかりな会議を通して検討されています。
深宇宙軌道修正は、来る水星軌道投入の演習としても役立っており、チームは何回も衛星の構成要素などをテストすることができました。全チームメンバーでの3回にわたるハードウェアシミュレーターによるリハーサルで、すべての軌道修正の手順を確認しています。このうち、最初の1回は順調にシステムが稼働することを念頭に置いたリハーサル、残り2回は、システムに異常が発生したことを想定した演習となっています。
・メッセンジャーチームの記事
  http://messenger.jhuapl.edu/news_room/details.php?id=156
・メッセンジャー (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/pex_world/MESSENGER/