NASAは、水星探査機メッセンジャーの探査期間を延長すると発表しました。来年(2012年)3月17日の基本観測期間終了後も、あと1年、観測を続行することになります。
今回の延長探査の決定は、11月9日に開催された、第24回のメッセンジャーチームの会合で発表されました。「まだ予算の詳細について詰めなければいけないところはあるが、水星探査の継続をサポートできることをうれしく思っている。」と、その会の席でメッセンジャーの計画科学者であるエド・グレイゼック氏が言明しています。
今回の基本観測では、これまで謎の天体とされてきた水星の姿を劇的に明らかにすることに成功しています。科学的にも大変な収穫が得られています。延長観測により、科学者たちが水星のさらなる姿を明らかにできるのではないかと期待していると、メッセンジャーの主任科学者である、カーネギー研究所のシーン・ソロモン教授は述べています。
ソロモン氏は、「延長観測期間中は、基本観測期間のときよりもより近く水星に近づき、広い範囲の科学的な観測を実施、撮像カメラを含む科学機器で、科学的に興味ある地点のスポット観測も行う。さらに、これから太陽活動の極大期を迎えることから、太陽活動と水星との関連を調べるよい機会ともなるだろう。この時期に水星を観測することで、新たな驚くべき発見が得られる可能性もある。」と述べています。
この延長観測期間では、メッセンジャーは以下の6つの科学的な疑問への答えを見いだすことを目標としています。

  1. 水星表面の揮発性物質の起源は何か?
  2. 水星表面での火成活動は、その歴史のどれくらいまで継続したのか?
  3. 水星表面での長波長の地形変動は、時間と共にどう変化したのか?
  4. 水星の外気圏が局所的に濃くなっているのはなぜか?
  5. 太陽活動の周期が、水星の外気圏、および揮発性物質の移送にどのような影響を与えるのか?
  6. 水星の高エネルギー電子の起源は何か?

メッセンジャーの探査科学者で、ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所のラルフ・マクナット氏は、「科学の進化は、最初は新しい知識から導かれる仮説の検証から始まり、やがてその小さな修正を経て、ときには大きなパラダイムシフトを起こしながら、まったく新しい考え、そして知見へと達するのである。基本観測期間での水星周回における観測で、私たちはすでにこういう進歩への入口に立っている。延長観測期間での観測により、『まだみぬもの』をみられるだろう。古い世界である水星は、これまでその真実をみせることを拒んできたが、いまそこに科学の新たな光を当てようとしているのだ。」と、延長探査への期待を語っています。
・メッセンジャーチームの記事 (英語)
  http://messenger.jhuapl.edu/news_room/details.php?id=188
・メッセンジャー (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/pex_world/MESSENGER/