2011年3月に水星周回軌道に入った探査機メッセンジャーは、1年間の基本ミッション期間、そしてその後の延長ミッション期間を終了しました。この3月17日に延長ミッション期間を終了しました。
現在、プロジェクトチームでは、さらに追加の延長ミッションを行う計画です。

メッセンジャーのプロジェクトマネージャーで、ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所のヘレン・ウィンタース氏は、「現在NASAは追加延長に向けて協議中で、機器などを運用し続けることができるかどうかを調べているところだ。」と述べています。

第1次延長探査期間(第2次はまだ決定していませんが、とりあえずこう呼ぶことにしましょう)内には、水星に揮発性物質が存在することを発見したり、非常に長い波長の地形の存在、火山活動についての調査、外気圏についての調査などを行ってきました。
第2次延長探査が認められれば、水星の表面についてのより詳細な探査、水星の進化についての研究、火山活動、極地域の揮発性物質、水星周辺のイオンや高エネルギー荷電粒子、外気圏や磁気圏と太陽風との関係及び太陽活動極大との関連の調査、水星の内部構造(地殻など)の調査などが予定されています。

第2次延長探査のミッションについては、現在(3月18日現在)テキサス州ザ・ウッドランズで開催されている、第44回月・惑星科学会議(LPSC)において話し合われることになります。

コロンビア大学ラモント・ドハーティ地球科学研究所に所属するメッセンジャーの主任科学者(前のプロジェクトマネージャーでもある)シーン・ソロモン氏は、「メッセンジャーはこれまでに多くの発見を成し遂げてきたが、その発見がまた新たな謎を呼び起こしている。私たちはまだ十分に活動が可能な探査機を水星の周回軌道に持っているし、水星を次に探査機が訪れるのは今後10年はないだろう(編集長注: これは「アメリカが」という意味でしょう。水星には2010年代後半に日本とヨーロッパ共同のベピ・コロンボ探査機が打ち上げられる予定です)。第2次延長探査のテーマはこれまで成し遂げてきた発見によって決められるものであり、しっかりとした軌道上での観測により成し遂げられる。さらに、現在は太陽活動極大期という好機でもあり、(今度の延長探査では)低緯度の集中観測を行うことも予定されており、水星の新たな姿を見出すことができるだろう。NASAがこの探査の延長を認可してくれることを望みたい。」と述べています。

ただ、ご承知の通り、NASAの月・惑星探査関連の予算は、今年に入ってからこれまでより2割程度と大幅な縮小を余儀なくされています。このような中で、さらなる延長についてNASAがどのような判断を下すのかに注目していく必要があるでしょう。
また、ソロモン氏のかなり強めの発言も、このようなNASAの予算逼迫に際しての強いメッセージであると考えてもよいでしょう。