今年3月に史上はじめての水星周回探査機となったメッセンジャーは、既に数千枚にも上る水星の詳細な写真を撮影し、地球へと送信してきています。NASAはこのほどこれらの写真、及びその写真の解析から判明した初期の科学的成果を公開しました。
探査機は、写真だけではなく、磁場などのデータも送信していています。この磁場のデータからは、水星の磁気圏では荷電粒子(電気を帯びた微小な粒子)によるバースト(爆発的な噴出)が発生しており、水星の磁気圏と太陽風との間に活発な相互作用があることがわかってきています。
メッセンジャーはこれまで3回水星にフライバイを行い、その後周回軌道へと入りましたが、このフライバイの際に撮影されたデータには、明るく、また点々とした物質がクレーターの底にあるのが確認できました。これが何か、ということは、高解像度の写真が得られるまで謎のままでした。
今回、高解像度の写真が得られたことで、この「ぽつぽつした」領域の正体が判明しました。この領域は実は小さな穴で、大きさは数百メートルから数キロにわたります。この穴の周囲にはぼんやりしたより明るい領域があり、またこの小さな穴はクレーターの中央丘やそのまわりのリング状地形、さらにはクレーターの縁でもみつかります。
この地形について、ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所のブレット・デネビ氏は、「このようなはっきりした特徴を持つ地形は、月はおろか、水星ですらみたことがない。この地形の起源について私たちはいまも議論を重ねているところだ。ただ、これらの地形(穴)は比較的最近(地質学的)にできたものと思われ、揮発性物質が水星表面にこれまで考えられていたより多いことを示しているのではないだろうか。」と述べています。
また、主要な元素を測定するために搭載された装置のうち1つが、周回後重要な発見を成し遂げました。水星表面の広い領域で、元素組成が月における値と大きく異なっているのです。
重要な発見として、水星表面にはこれまで考えられていたよりもかなり多くの量の硫黄が存在することがわかってきました。これは、以前に行われた地上からの望遠鏡による観測で、水星表面に硫化鉱物がみつかったことをサポートする傍証として重要です。このことは、水星が誕生した際の環境は、他の天体が誕生した環境よりも還元的(酸化的ではない)であったことを示唆しています。
水星の北半球の地形データからは、水星全体の地形の特徴などが明らかになってきました。水星の北極域は比較的標高が低い領域が広がっているのに対し、これまで測定してきた領域全体では高さが9キロメートルにも達するとのことです。
20年ほど前、地上からのレーダー観測によって、水星の極地域に氷が存在する可能性が指摘されました。この氷は、極地域にある(と思われる)永久影を持つクレーターの影の中に存在すると考えられてきました。今回、メッセンジャーでは、水星の北極地域にあるクレーターの深さを測定することで、この考えが実際に成り立つのかどうかを調べてみました。その結果、クレーターは永久影を持つのに十分な深さがあり、このような氷が永久影に存在していてもおかしくない、という結論に達しました。
水星の磁気圏については、マリナー10号が4回にわたって磁気圏における荷電粒子のバーストを観測しています。ところが、メッセンジャーの3回にわたるフライバイでは、このようなバースト現象は観測されず、科学者の頭を悩ませてきました。ところが、今回の周回観測で、このようなバースト現象が定期的に起きていることがわかったのです。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2011/jun/HQ_11-186_MESSENGER_Update.html
・メッセンジャー (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/pex_world/MESSENGER/