水星探査機メッセンジャーの観測成果から、水星の大気とその進化についての重要な知見が得られたことがわかりました。
メッセンジャーはこれまで水星に3回フライバイを行い、来年(2011年)には水星を回る軌道に投入されることになっています。この3回目の最後のフライバイの際に取得したデータから、水星の超高層大気でイオンが光っている様子、水星の磁気圏の擾乱、これまでよりももっと新しい火山活動の痕跡などがみつかりました。これらの発見については、7月15日付の科学雑誌「サイエンス・エクスプレス」で発表される予定です。
また、高層大気における水星大気中の化学物質の垂直分布について、南極と北極上空の分布がはじめて明らかになりました。ナトリウムやカルシウム、マグネシウムといった元素の分布が示されていて、それぞれの元素(化学物質)の相互作用などがあることがわかってきたとのことです。
超高層大気で、カルシウムイオンが光を放射していることも明らかになりました。この光は局所的で、赤道面に特に集中しているとのことです。
一方、火山活動についてです。最初の2回のフライバイでは、水星には全球的な火山活動があることが明らかになりました。3回目のフライバイでは、直径約300キロメートルの衝突盆地の中に、これまででもっとも年代の若い溶岩をみつけることに成功しました。この盆地はラフマニノフと名付けられており、盆地の中の部分は周りの地域とは異なる、平坦な溶岩で埋め尽くされています。クレーターの数が少ないことから、この平原の年代は若いということがわかりました。
探査科学者の一人であるジョンズ・ホプキンス大学のルイーズ・プロクター氏によると、この平原はこれまでみつかってきた中でももっとも若い溶岩平原で、火山活動の期間もこれまで考えられていたよりももっと長期にわたっていたとのことです。おそらくは太陽系ができてからの後半(大体20億年前)までは火山活動が続いていたのではないかとのことです。
また、この3回目のフライバイでの観測の結果、水星磁場の擾乱、あるいは水星磁場の「テイル」と呼ばれる後ろに尾を引くような形状が観測できました。このテイルは大きなエネルギーをもち、また動きが急で、できてから消滅するまでがたった2〜3分というものです。エネルギー量は同じ地球のテイルに比べると10倍にものぼり、その動きは50倍も速いということです。
このような磁場の擾乱は、太陽風と惑星磁場との相互作用で発生しますが、研究者は、水星で発生している現象は、地球でみられるものよりもはるかにスケールが大きいと考えています。
このような多くの発見から、研究者は、来年(2011年)にも予定されている水星周回軌道への投入によって、さらなる発見があるものと期待を寄せています。
・NASAのプレスリリース (英語)
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2010/jul/10-170_Messenger_New_Info.html
・メッセンジャー (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/pex_world/MESSENGER/