木星探査機ジュノーは、アメリカ東部標準時(夏時間)で8月5日午後0時25分(日本時間8月6日午前1時25分)、フロリダ州のケープカナベラル空軍センターから打ち上げられ、5年間にわたる木星への旅に出発しました。

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ジュノーの打ち上げ

ジュノーの打ち上げ

ジュノーによる探査は、木星の成因や進化などについて大きな情報をもたらすものと期待されています。典型的な巨大惑星である木星について知ることで、太陽系の進化や、他の恒星の周りにある惑星(系外惑星)についての科学者の理解が深まることも期待してよいでしょう。
ジュノーは、アトラスV型ロケットで打ち上げられ、現在、衛星の追跡管制チームは、衛星からの電波の受信を待っています。それによって、衛星が正しい姿勢を向いているか、また、NASAの衛星史上最大となる太陽電池パネルが正常に展開されているかどうか(そして、それによって電力が確実に供給されているかどうか)を知ることができます。
ジュノーの速度は非常に速く、地球から月までの距離(ほぼ40万キロ)は1日で飛行します(編集長注=但し、史上最速というわけではありません。最も速い探査機はニューホライズンズで、地球ー月間の距離は4時間弱で飛行します)。木星までの飛行距離は28億キロに達します。
木星到着後、探査機は木星の周囲を33回周回します。周回軌道は木星を南北に回る極軌道です。搭載された8つの科学機器により、木星の大気に浮かぶ雲の下を調べ、木星の起源や大気、磁気圏などを調べるほか、内部構造、とりわけ木星内部に固い固体のコアがあるかどうかについても調べます。
木星は4つの大きな衛星(ガリレオ衛星)を持ち、いわば「ミニ太陽系」です。もし木星があと80倍大きかったら、木星は自ら核融合反応によって輝き、恒星となっていたことでしょう。
ジュノー計画の主任科学者であり、テキサス州サンアントニオにあるサウスウェスト研究所のスコット・ボルトン博士は、「木星はいわば太陽系のロゼッタストーンのようなものだ。木星はどうみてもいちばん古い惑星であり、他のすべての惑星や彗星、小惑星を合わせたより多い質量がある。その中には、太陽系だけでなく、我々(生命)につながる情報が潜んでいるはずだ。ジュノーはいわば私たちの『特使』として、木星が発する言葉を翻訳して我々に伝えてくれるのだ。」と、探査への期待を語っています。
なお、この「ジュノー」という名前は、ローマ神話の女神から来ています。神であるユピテル(ジュピター、あるいはゼウス)は彼の回りに雲を取り巻かせ、彼自身のいろいろな身勝手な振る舞いを隠そうとするのですが、ジュノーだけはその雲の中にある彼の真の姿を見ることができた、というのです。なお、「ジュノー」は英語で6月を意味する「ジューン」(June)の語源ともなっており、ギリシャ神話ではヘラと同一視されます。また、結婚生活の守護神でもあることから、「ジューンブライド」(6月の花嫁)という言葉がよく使われます。小惑星のジュノーも、この女神の名前から来ています。
NASAのチャールズ・ボールデン長官は、今回の打ち上げについて「NASAは新たなフロンティアへの旅を開始した。将来の探査は、このような最新の科学を通し、私たちの太陽系をより深く理解すること、そしてさらなるより遠く、難しい目標への挑戦を続けていくことになるだろう。」と語っています。