5年の旅を経て、ついに目的地へ…。
2011年に打ち上げられ、木星に向けて飛行していた探査機「ジュノー」は、7月4日午後8時53分(アメリカ太平洋夏時間。日本時間では7月5日午後0時53分)に木星周回軌道へと入りました。より正確にいいますと、この時刻に、周回軌道に入るための35分にわたる逆噴射が正常に終了した、という信号が地球に送られてきた、ということです。

木星を周回するジュノー探査機

木星を周回するジュノー探査機の想像図 (Photo: NASA)

NASAの月・惑星探査の本拠地である、カリフォルニア州パサデナにあるジェット推進研究所(JPL)では、この探査機を製造したロッキード・マーチン社の技術者とともに、NASAの技術者が信号を待機していました。そして、NASAの深宇宙追跡網(月・惑星探査機との交信を行うための大型アンテナのネットワーク)を通して、木星周回軌道への投入成功の信号がもたらされたのです。

「(アメリカ独立記念日の)7月4日だというのに(編集長注: アメリカ独立記念日はアメリカでももっとも大きな祝日とされていて、多くの人が行楽に出かけたり、お祝いの花火大会などに行ったりします)、窓のない部屋に閉じ込められて夜まで仕事をしていたが、それはまさにこの知らせを待つためだった。ミッションチームはよくやってくれた。探査機もよくやってくれた。我々もよくやった。」ジュノーの主任研究者であり、サウスウェスト研究所のスコット・ボルトン氏は手放しの喜びようです。

木星周回軌道投入に先立ち、探査機は逆噴射に使うメインエンジンの方向を正しく向けるための姿勢制御、及び探査機の安定を高めるための回転(毎分2〜5回転)への回転加速を行いました。その後、ジュノーが搭載する645ニュートンの推力を持つメインエンジンの噴射が午後8時18分(アメリカ太平洋夏時間。日本時間では5日午後0時18分)から開始され、探査機は秒速約0.5キロメートル減速しました。噴射終了後、探査機は直ちに姿勢を変えて太陽を捕捉し、太陽電池が十分な電力を得られるようにしました。
ジュノーはこれまでの外惑星(木星、土星、天王星、海王星)と異なり、原子力電池ではなく太陽電池を電源とする探査機です。ただ、木星はやはり太陽から遠いため、電力の確保は重要問題です。

「探査機の動作は完璧だった。皆さんの車が走行距離27億キロメーターを走ってもまだ完璧だったらきっと気分がよいだろう。そういうことだ。木星周回軌道投入は我々にとっても非常に大きなステップであると同時に、探査のもっとも大きな山場でもあった。でも科学チームに大きなプレゼントを渡す前に、もうちょっとまだやることは残っている。」(JPLのジュノーのプロジェクトマネージャー、リック・ナイバッケン氏)

そうです。探査機の木星周回軌道投入はあくまでも「ミッションのスタート」であり、特に科学観測チームにとってはこれからが本番となります。今後数カ月をかけて、ジュノーのミッション・科学チームは探査機各システムの最終テストを実施します。また科学機器についても最終的な較正(観測機器のセンサーなどの状態が正しいかどうかを確認の上、必要な調整を行うこと)を実施し、観測に備えます。ボルトン氏によると、観測は予定では10月には開始されるとのことですが、そのずっと前にデータを収集することについてはすでにめどが立っているそうです。10月を待たずして木星についてのジュノーからのデータが我々のもとに届くかも知れません。

ジュノーの目的は、木星の起源と進化を探ることです。9つの科学観測機器を搭載し、木星に存在するとされる巨大な中心核(コア)の存在の確認や木星の磁場の詳細な観測、大気の下部の水やアンモニア量の観測やオーロラの観測などを実施し、木星全体の理解を図ることを目的としています。
特に、木星のような巨大惑星がどのようにして誕生し、またそのような惑星が他の惑星や天体にどのような影響を与えているかを理解することで、太陽系誕生の理論に貢献できることが期待されています。

ジュノーのミッションは公式には1年間とのことで、その間にどのようなデータが送られてくるかが大変楽しみです。

今回のジュノーの木星周回軌道投入成功を受けて、NASAのチャールズ・ボールデン長官は以下のようにコメントしています。
「アメリカ独立記念日『インデペンデンス・デイ』はお祝いの日である。今日、私たちはアメリカ合衆国の誕生日に際し、もう1つの慶事を加えることができた…ジュノーの木星到着である。そして、これからも私たちは、まだみぬ地への大胆な挑戦を続けていく。ジュノーの探査によって、木星の巨大な放射線帯を徹底的に調べ、この惑星の内部を明らかにするだけでなく、どのように木星が誕生し、今日まで進化を遂げてきたのかを明らかにする。そしてそれは太陽系の誕生と進化を明らかにすることでもある。」

  • NASAのプレスリリース