私など以前からそう呼んでいましたし、月探査情報ステーションのカテゴリー名もこうなっていたので「いまさら」感はあるのですが、一応NASAがそう言っているのですから、そうなのでしょう。
NASAは10日、現在検討中のエウロパへの探査計画について、正式に名称を「エウロパ・クリッパー」とする、と発表しました。

探査機ガリレオが撮影したエウロパの姿

探査機ガリレオが撮影したエウロパの姿 (Photo: NASA/JPL-Caltech/SETI Institute)

19世紀、「クリッパー」という名前は、大西洋を高速で横断する帆船に名付けられました。より速く横断できたものが「最速」の称号を得られる、クリッパーとはそのような栄誉を意味する言葉なのです。時代は移り変わり21世紀となりましたが、この「最速」の称号を意味するクリッパーの名を冠した探査機は、木星の衛星、エウロパまで高速で飛ぶことになります。そして、一度エウロパに到着すれば、最高で2週間に1回はエウロパに接近し、エウロパの様子をこれまでにないほど事細かに調べることになるでしょう。NASAでは、40〜45回程度最接近を行うとしています。
もちろんただ接近するだけでなく、そのたびに探査機は高解像度の写真を撮影するほか、各種の科学観測を実施します。
エウロパは、地下に(塩水の)海があるとされ、その海はひょっとすると生命を育んでいるかも知れないと期待されています。さすがに潜るのは難しいにしても、エウロパの海の証拠、そしてあればどのような海なのかを、上空からの観測によってできる限り明らかにする、これがエウロパ・クリッパーの目的です。
NASAでは、エウロパ・クリッパーの究極の目的として、エウロパが生命を育める天体であるかどうかを明らかにすること、そしてエウロパに生命を育むことができる3つの要素…水、有機物、そして適度なエネルギーが存在するかどうかを明らかにすることとしています。

エウロパ・クリッパーのプロジェクト科学者であるジェット推進研究所(JPL)のロバート・パッパラード氏は、「エウロパに接近するということは、木星の強力な放射線帯の中を通過するということではあるが、探査機の速度が速いためその時間は短くて済むだろう。エウロパ接近の際には大量の科学的なデータを集めることになり、それは私たちの未来への帆を高く揚げることにつながる。」と、クリッパーになぞらえながら期待を述べています。

現在のところ、打ち上げは2020年代を予定しており、エウロパには数年かけて飛行する計画です。エウロパに限らず、太陽系の特定の衛星(月を除いて)をここまで詳細に探査するミッションは世界ではじめてです。成功すれば、太陽系に新たな生命の存在という大発見があるかも知れません。
ヨーロッパも、現在「ジュース計画」というエウロパ探査計画を立案しており、この計画には日本も機器提供などで協力する見込みとなっています。2020年代というとまだもう少し先ですし、実際のミッションの成果が出てくるのは2030年代になってしまうかも知れませんが、まだ見ぬ生命への旅が火星を超え、いよいよ外惑星系へと向かっていきます。楽しみです。

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