1997年に打ち上げられ、2004年6月に土星に到着した探査機カッシーニは、この6月末で、第1段階の探査期間(基本探査期間)を終了します。このあと、さらに2年間の延長探査が予定されており、この延長探査では、土星やその衛星、とりわけ不思議な世界であることがわかってきた2つの衛星、タイタンとエンセラダスについてより詳しく調査を行う予定です。
この延長探査は今年の4月に実施が決定したものです。
この4年間の探査はきわめて実りあるものでした。カッシーニは衛星タイタンが地球にいくらか似た世界であること、そして、エンセラダスには生命をはぐくむ可能性があるということを見つけ出しました。「カッシーニ分点探査」(Cassini Equinox Mission)と名付けられたこの2年間の延長探査では、この2つの衛星が主要な目標となります。また、この間には土星本体、及びタイタンの季節変化を観測するほか、土星の磁気圏の探査、また、2009年8月、土星の輪が太陽に対して垂直になり、土星表面のほぼあらゆる場所に日が当たる(地球からは輪がほとんどみえなくなる)現象を利用した観測なども行います。
「科学的な発見という意味では、いろいろなことがあり、また非常に楽しい探査期間だった。また、探査機でいえば、いろいろなことがなかったという意味でこれまたよい探査だった。」と語るのは、カッシーニ計画の主任責任者であるJPLのボブ・ミッチェル氏です。「打ち上げの際に設定した目標をほぼすべて達成できたことを、われわれはものすごく誇りに思っている。以前からあった疑問のいくつかには答えを出せ、そして新しい疑問がまた新たに出てきた。だからこそ、われわれは旅を続けるのだ。」
さて、今回の延長探査では、カッシーニの科学チームに、新たに地質学者のボブ・パッパラルド(Bob Pappalardo)博士が加わります。彼は外惑星の氷衛星の地質構造の専門家で、エンセラダスの噴泉についても調査を行っています。アリゾナ州立大学で博士号を取得したあと、ブラウン大学でガリレオ探査機の画像解析の仕事を行い、2006年からJPLでの研究生活を送っています。また、コロラド大学ボールダー校の准教授でもあります。
「今回このように科学的に非常に成果を得ている探査に加わることができ、また公明な科学者や技術者と一緒に仕事を行うことができ、非常に名誉な思いであると同時に、身の引き締まるような気持ちだ。」とパッパラルド氏は語っています。
・JPLのプレスリリース
http://www.jpl.nasa.gov/news/news.cfm?release=2008-122
・カッシーニ/ホイヘンス (月探査情報ステーション)
http://moon.jaxa.jp/ja/pex_world/cassini/