カッシーニのミッションの最後が少しずつ近づいてきました。
9月15日の土星大気への突入・ミッション終了に向けた作業は、着実に進められています。その一環として、探査機は11日午後0時4分(アメリカ太平洋夏時間。日本時間では12日午前4時4分)、土星の衛星としては最大の衛星であるタイタンへの最後の最接近(フライバイ)を実施しました。
リリースを出したジェット推進研究所(JPL)では、この最後の最接近を「お別れのキス」と称しています。なんと美しい例え方でしょうか。

カッシーニのタイタン最後の最接近の想像図

カッシーニのタイタン最後の最接近の想像図 (Image: NASA/JPL-Caltech)

最後となるタイタンへの最接近(フライバイ)の距離はタイタンから11万9049キロメートルでした。
カッシーニは12日の午後6時19分(アメリカ太平洋夏時間。日本時間では13日午前10時19分)から地球との交信を開始します。この交信で、最後の最接近で撮影したタイタンの写真、及び取得した各種科学データを地球へと送ってくることになる予定です。
また、カッシーニの軌道制御チームは、今回のタイタンへのフライバイによって探査機が所定の軌道を飛行しているかどうか確認する予定です。チームでは軌道が正確で、予定通りの時間及び場所に探査機が突入することを確認する予定です。

今回の最接近は、技術者からは「お別れのキス」(the goodbye kiss)と呼ばれています。なぜかというと、今回のタイタンへの最接近は、最後に土星の大気へと突入するための軌道に調整するためのものだからです。タイタンに最接近することで、探査機はタイタンの重力を利用して軌道を変更、土星の大気へと突入する軌道へと自らを導きます。
今回の最接近により、カッシーニは若干減速し、土星へと近づく軌道に入ります。こうして高度を次第に下げ、最終的には土星大気へと突入し、燃え尽きます。

2004年6月末にカッシーニが土星に到着して以来、カッシーニは何度となくタイタンに接近し、観測を行ってきました。その数は127回にも及びます。ものすごく近づいたこともあれば、今回のように比較的離れた接近もあります。しかし、もうカッシーニがタイタンのそばを飛行することはありません。
「タイタンはカッシーニにとっては長年の仲間のようなものだった。この13年、毎月のようにタイタンに近づいていたからだ。今回の最後の最接近は、いってみればほろ苦いお別れのようなものかもしれない。しかし、ミッションにとっては重要なことで、タイタンの重力によって、カッシーニは私たちが目指す場所へと導かれたわけだ。」(カッシーニ計画のプロジェクトマネージャーである、JPLのアール・メイズ氏)

9月15日の最後まであとほんのわずか。カッシーニは最後の瞬間までデータを取り続け、地球に送り続けます。

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