これまで火星探査には割と「冷淡」と思われていた中国ですが、実は着実に火星探査にも「手を出している」ということが明らかになりました。
少し古くなりますが昨年11月3日付の中国科学報では、中国の自主開発とされる火星探査機が上海の第17回中国国際工業博覧会で展示されたことを伝えています。驚くべきことに、中国では事実上初となるこの火星探査機は、周回機と着陸機の2機構成(つまり、最初から着陸を狙いにいくということ)となっており、当局は探査機を火星に送り込むことはもちろん、通信や着陸(火星は大気があるため、着陸はかなりの困難を伴います)にも自信をみせています。
下の写真、上部のUFOのような円錐形の形をした部分が周回機、下部の四角い部分が着陸機とのことで、着陸機の部分には逆噴射用の燃料を入れておくためと思われる球形の燃料タンクや、同じく逆噴射用と思われるエンジンも見えています。
中国の火星探査機は、2011年に打ち上げた「蛍火1号」があります。これは、ロシアの火星探査機「フォボス・グルント」に相乗りする形で打ち上げられましたが、フォボス・グルントが地球周回軌道から脱出できずに失敗したのと一緒に失敗するという不運に見舞われました。
その後あまり中国の火星探査の話は聞こえてくることはなく、月に集中しているのかと思われましたが、この記事をみると火星探査についても着実に進めているということがわかります。
最初から周回機と着陸を狙うというある種大胆な探査の目的としては、「アジア初の火星着陸」(アジア初の火星探査機の座はインドに奪われています)を狙うという国威発揚の側面や、嫦娥シリーズで培った着陸技術を火星などの他の天体でも試したいという思惑があるかと思われます。もちろん、世界の潮流となっている火星探査にも加わりたいという意図はあるでしょう。
一方で、写真でみる限り、火星探査機の模型はやや「モックアップ」という感じを否めないという印象です。今後、この火星探査機がどのように進展していくのかについても、情報を収集していくことが必要かと思われます。
- 中国科学報の記事
http://crds.jst.go.jp/dw/20160120/201601207725/