各種報道によりますと、ロシアの火星探査機フォボスグルントは、日本時間16日午前2時45分頃、南米チリ沖合の東太平洋に落下したとのことです。衛星を追跡していたロシア宇宙軍が明らかにしました。
ロシア当局のスポークスマン(編集長注: spacemart.comの記事には、どの所属機関かは書かれていません)のアレクセイ・ゾロツーキン紙は、ロシア宇宙軍のミッション制御センターの話として、モスクワ時間の午後5時45分(日本時間午前2時45分)に、探査機が太平洋上に落下したと述べています。
イタル・タス通信によると、位置としては、チリのウェリントン島の西約1250キロとされています。ただ、正確な落下の時間や場所についてはまだ完全に特定されておらず、今後の解析などにより特定が進むと思われます。
また、情報に若干混乱もあるようで、ノーボスチ通信は、ロシアの弾道専門家の話として、落下地点はブラジル沖の大西洋と報じています。
今回のフォボスグルントは、重さが13.5トンもある大型の探査機です。11月9日(日本時間10日)に打ち上げられましたが、地球周回軌道への投入後、火星への遷移軌道への移行に失敗、そのまま地球周回軌道にとどまったあと、大気との摩擦などで徐々に高度を下げ、最終的に大気圏に突入し、地表へ落下することとなりました。探査機は開発に1億6500万ドル(約127億円)の費用がかけられていました。また、中国の火星探査機「蛍火1号」も搭載していましたが、これも一緒に地表に落下したと考えられています。
また、この重さの大半、11トンを占める推進剤は、有毒な非対称性ジメチルヒドラジンという物質ですが、これについては上空ですべて燃え尽きてしまったと考えられています。今回はロシア伝統の強固なチタン製タンクではなく、アルミ製のタンクに格納されていたため、燃えやすかったのではないかと思われます。
なお、いまのところこの落下による人的、物的被害は報告されておりません。
今回のロシアの火星探査機の打ち上げ失敗は、ロシアが1950年代後半から延々と続けてきた宇宙開発の歴史に大きな汚点を残すものとなりました。フォボスグルントは、火星の衛星フォボスから土壌サンプルを回収するという極めて野心的なミッションで、また、ロシアの宇宙開発復活の象徴となるはずでした。
これに加え、ここ1年間で多発しているロシア宇宙開発関係のトラブルは、一度は大きな賞賛を得たロシア宇宙プログラムに対する評価を失墜させるものとなっています。
・spacedaily.comの記事 (英語)
  http://www.spacemart.com/reports/Russia_Mars_probe_crashes_into_Pacific_military_999.html
・フォボスグルント/蛍火1号 (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/mars/exploratoin/future.html#PHOBOSSOIL