11月の打ち上げ以降、地球周回軌道にとどまったまま、動きがまったくとれなくなってしまったロシアの火星探査機「フォボスグルント」ですが、ついにその命運が尽きる日が近づいてきてしまったようです。
Marsdaily.comが伝えるところによりますと、ロシア連邦宇宙局がこの11日に発表したフォボスグルントの軌道予測では、今週末、インドネシア・ジャカルタ西方のインド洋に落下する見通しになっています。
宇宙局の発表によると、フォボスグルント本体の落下は、14日から16日の間になると予想されており、その中間の時間帯は、モスクワ時間で15日の午後1時18分(日本時間では同日午後7時18分)となっています。但し、探査機は緩やかに落下しているため、正確な場所と時刻についてはわからないとのことです。
また宇宙局は、この探査機の破片は20〜30個ほどとなり、合計で200キログラムほどが地球表面に落下するだろうと予測しています。ただ、探査機が搭載している有毒な燃料(編集長注: ヒドラジン(UDMH)と四酸化二窒素(NTO))に関しては、大気中で完全に燃え尽きるため、地上への影響はないとしています。
今回の探査機は、開発に1億6500万ドル(日本円で約127億円)の費用がかけられ、昨年11月9日(日本時間10日)に打ち上げられましたが、探査機のトラブルにより、地球周回軌道からの離脱に失敗、そのまま周回軌道にとどまってしまっています。
今回の探査は、旧ソ連からロシアへと変わってから2回目の火星探査計画、ロシアになってから計画されたものとしてははじめてのものであり(編集長注: ロシアは「マーズ96」という火星探査機を1996年に打ち上げていますが、これは旧ソ連時代から計画されていたものです)、ロシアの月・惑星探査分野での復活をアピールするものになるはずでした。また、探査機には中国初の火星探査機「蛍火1号」も搭載されており、中ロの宇宙協力という意味でも重要な計画になるはずでした。
ロシアは2011年に数多くの打ち上げ失敗を続けています。国際宇宙ステーションへ物資を輸送する無人補給機プログレスが8月に打ち上げ失敗、また測位衛星を3機、軍事衛星、そして通信衛星の打ち上げにも失敗しています。昨年12月には、通信衛星の打ち上げに失敗、その破片がシベリアの村へと落下しています。
今週になって、宇宙局のポポフキン長官は、一連の失敗の背後には外国勢力の存在があると示唆、その理由として、ロシアから探査機やロケットがみえない(非可視の)時間帯にほとんどのトラブルが発生していることを挙げています。
(編集長注)
この長官の発言の真意はわかりませんし、外国勢力が度重なる妨害工作をする可能性はそれほど高いとは編集長としては思えませんが、ロシアの宇宙開発が今後大きな見直しを迫られることは確かでしょう。また、ロシアに有人輸送を頼っているアメリカ、ソユーズロケットを輸送手段として採用しているヨーロッパ、両者の宇宙開発にも大きな影を落とす可能性があります。さらにいえば、有人輸送手段は現在のところ日本もロシアに依存しているため、今後日本の宇宙開発の方向性の議論の際にも、この問題が大きくクローズアップされてくることと思われます。
・Marsdaily.comの記事 (英語)
  http://www.marsdaily.com/reports/Stranded_Mars_probe_to_crash_into_ocean_Sunday_Russia_999.html
・フォボスグルント/蛍火1号 (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/mars/exploration/future.html#PHOBOSSOIL