この14〜16日にも大気圏に突入し、地表へ落下するとみられているロシアの火星探査機、フォボスグルントについて、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が、各国に落下についての監視を呼びかけることになりました。これは、ESAの宇宙デブリ担当部が、各国宇宙機関で構成する宇宙デブリ監視ネットワークに呼びかけて行われるもので、この宇宙機関にはNASAやロシア連邦宇宙局も含まれています。
また、ESAの専門家は、落下に関する精密予測も実施しています。
1月2日、国際機関間デブリ調整委員会(IADC)は、フォボスグルントの大気圏突入について詳細な検討を開始、ドイツ・ダルムシュタットにあるESAのヨーロッパ宇宙運用センター(ESOC)が、この落下に関する情報のデータベースを運用することになりました。なお、IADCは、各国の宇宙機関により構成される宇宙デブリの監視、提言への活動を行う組織で、もちろんJAXAもその一員です。
ESAの宇宙デブリ担当部はこのESOCの中に設けられており、データベースはIADCメンバー間で交換され、大気圏突入の予測に用いられます。
現在、フォボスグルントの軌道予測については主にアメリカの宇宙監視ネットワーク、及びロシアの宇宙監視システムにより提供されています。また、ドイツとフランスにあるレーダーを使って、ESAでも軌道予測が行われています。
ロシア当局によると、フォボスグルントは重さ13.5トンもある非常に大きな探査機で、そのうち11トンが推進剤、全体のサイズは3.76×3.76×6.38メートルもあります。また、太陽電池パネル両端の大きさは7.97メートルにも達します。
ESA宇宙デブリ担当部の長を務めるハイナー・クリンクラッド教授は、「現時点では非常に多くの不確定要素があり、現時点で予測できることとしては、フォボスグルントの再突入は13日から17日の間、場所は北緯51.4度から南緯51.4度の間である」と述べています。また、「ロシア宇宙局とNASAの計算では、探査機器に搭載されている燃料の非対称ジメチルヒドラジン(UDMH, 有毒な物質として知られる)は、高度100キロ以上の上空で全て燃え尽きてしまい、地上にはやってこないだろう」とも語っています。
さらに教授は、探査機自身の重さは燃料を除くと約2.5トンほどと比較的小さいことから、探査機の大気圏突入はそれほど大きな危険を伴うわけではないとも述べています。ロシア連邦宇宙局の推測では、探査機は20〜30個の破片に分解し、最終的に200キログラムほどの物体が地上へ落下すると考えられています。
宇宙開発が始まって以来、人工物体の地球への再突入で人が死傷した、という例はありません。
近年になって、IADCでは特に潜在的な危険を伴う宇宙物体について、その情報を交換するネットワークを構築しています。加盟機関の間で、こういった(突入の際に危険を生じさせるおそれがある)宇宙物体の軌道の情報やその予測情報などの交換が行われています。
IADCのメンバーはESA, NASAをはじめ、ヨーロッパ各国の宇宙機関、中国、ロシア、カナダ、日本、ウクライナ、そしてインドの宇宙機関により構成されています。
今回のフォボスグルントの落下監視は、将来的にIADCが他の宇宙物体の大気圏再突入の時間や軌道を予測する際のモデルの精度向上に役立てられます。
・marsdaily.comの記事
  http://www.spacedaily.com/reports/ESA_Coordinates_International_Satellite_Reentry_Campaign_For_Phobos_Grunt_999.html
・フォボスグルント/蛍火1号 (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/mars/exploration/future.html#PHOBOSSOIL