NASAはこのたび、新しい火星探査計画を実施に移すことを決定しました。
この探査計画は、「火星大気・揮発性物質探査」(Mars Atmosphere and Volatile EvolitioN)と呼ばれており、英語の頭文字をとって、「メイバン」(MAVEN)と呼ばれています(編集長注: 英語でmavenとは「物知り」といった意味です)。この探査機は2013年末に打ち上げられる予定で、開発費用は4億8500万ドル(約500億円)となっています。この計画は、NASAが2006年8月に行った探査提案要請に応じて寄せられた20の提案から選定されたものです。
NASA本部の火星探査プログラム部長のダグ・マッキストン氏は、「今回の探査では、火星の進化に関して科学的に重要な問題について、初めての直接探査が行われるということになる。」と語り、その重要性を強調しています。
火星はかつて、液体の水を宿すことができる分厚い大気を持っていたと考えられています。その後に起こった劇的な気候変化の影響によって、その大気の大部分は失われたと考えられています。メイバンでは現在の大気の流失を詳細に観測し、過去にどのような大気の流失が起こっていたかを探るための手がかりを得ようとしています。
「火星からの大気の流失はいまも続く謎だ。メイバンがきっとその謎を解くのに力を貸してくれるだろう。」(マッキストン氏)
メイバンの主任研究者は、コロラド大学ボールダー校の大気・宇宙物理研究所に所属するブルース・ジャコスキー氏です。同大学は来年にNASAより600万ドル(約7億円)の資金を受け取り、科学的、技術的な検討を進めます。また、計画の管轄は、NASAのゴダード宇宙センターが担当します。機体製作は、これまでNASAのマーズ・リコナイサンス・オービタの製作などを手がけてきた、コロラド州リットルトンのロッキード・マーチン社の工場が担当します。これらのチームは、2009年秋より、実際のミッションデザインや製作を手がけることになります。
メイバン探査機の火星到着は、現在の予定では2014年秋となっており、近火点90マイル(およそ145キロ)、遠火点3870マイル(およそ6230キロ)の軌道に投入されます。搭載される8つの科学機器は、約1年(約半火星年)にわたって観測を行います。メイバンはまた、高度80マイル(およそ130キロ)での火星大気のサンプルを取得します。これは火星の上層大気にあたります。また、同時期に計画されている、火星地表での探査機とのデータ中継を行う役割も果たします。
「メイバンは、アメリカ国立科学アカデミーが2003年に選定した『惑星探査10年の重要課題』に関して鍵となるデータを取得するはずである。この分野の研究については、NASAでも2005年に太陽・地球システムの連携に関する新しい科学として、NASAのロードマップの中に採用されている。」と、NASA本部の火星に関する主席科学者、マイケル・メイヤー氏は語っています。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2008/sep/HQ_08-233_MAVEN_Mars_mission.html