NASAの将来無人火星探査プログラムについての再検討、そして内外の科学者や技術者による検討をサポートするために設置された新しい組織、火星プログラム検討グループ(MPPG: Mars Program Planning Group)が、本格的な活動を開始しました。
先日のブログ記事でもお伝えしましたが、来年以降、NASAの月・惑星探査予算は大幅に減少ことになります。一方で、オバマ大統領は、2030年代には火星有人探査を実現させたい意向です。こな情勢の変化をふまえ、最適な火星探査プログラムを立案することが、このグループに課せられた使命といえます。
NASAの科学ミッション部門の副部門長であり、自身は5回の宇宙飛行を経験した宇宙飛行士、そして天文物理学者でもある(そして、先日月惑星科学会議で行われたNASAミーティングにも出席した)ジョン・グランズフェルド博士は、「私たちは、最適な火星探査の道筋について検討すべく迅速な検討を行っている。その一環として、国際的な意味を含めての科学コミュニティにも検討に参加してもらい、NASA全体としての今後の火星探査の方向性を決めていくことが重要だと考える。」と、このグループの活動意義を述べています。
このグランズフェルド博士率いるグループで活動するのは、ほかに、NASAの有人探査活動部門の副部門長であるウィリアム・ガーステンマイヤー氏、主席科学者のワリード・アブダラティ氏、主席技術者のメーソン・ペック氏です。
このMPPGですが、2月にグランズフェルド博士は、退役した宇宙技術者であるオーランド・フィゲロア氏をグループ長に指名、3月には活動全体の工程表をまとめ、探査の選択肢やNASAの科学、有人探査、運用や技術とをつなぐ部分についての検討を行いました。
本日(プレスリリースは4月13日付)から、国内外の科学者が、NASAに対し、最適な探査についてのアイディアや提案をまとめて提出することが可能となっています。提案は、6月にヒューストンの月惑星研究所(ここは、先日の月惑星科学会議を主催している団体でもあります)で開催されるワークショップで紹介され、議論されることになります。
このワークショップは、提案の紹介だけでなく、議論も行われることになります。そして、提案を元に、2018年以降の火星探査についての計画に盛り込まれていくことになります。
NASA本部の火星探査プログラム長のダグ・マッキストン氏は、「コミュニティから意見をインプットしてもらうことは、検討のプロセスを活性化するために欠かせない。これらの意見をまとめた上で、将来火星探査計画が、科学、そして有人探査や技術的な発展をサポートするようにしていきたい」と述べています。
NASAは火星探査に関しては輝かしい歴史を持っています。現に、2004年から活動を始めているマーズ・エクスプロレーション・ローバー「オポチュニティ」は、8年後のいまでも活動を続けるという驚異的な記録を持っています。周回衛星は、2001マーズ・オデッセイ(こちらはなんと10年間活動を続けており、惑星探査機としてやはり驚異的な寿命です)とマーズ・リコネサンス・オービターが活動を続けています。
さらに8月には、マーズ・サイエンス・ラボラトリーが着陸し、ローバー「キュリオシティ」が活動を開始する予定です。2013年には新たな周回機「メイバン」も打ち上げられます。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/apr/12-112_MPPG_Update.html
・火星探査計画に関するワークショップの案内 (月惑星研究所)(英語)
  http://www.lpi.usra.edu/meetings/marsconcepts2012/