NASAのマーズ・エクスプロレーション・ローバ「スピリット」と「オポチュニティ」は、当初の3ヶ月の基本探査期間をはるかに超え、この1月で5年目の探査に入りました。このローバが探査した最新のデータにより、火星の表面について新たな事実がわかりました。火星の表面には塩分(正確には、塩のようなミネラル成分)が多いのです。
ローバの科学チームの一員であるハーバード大学のアンドリュー・クノール氏によると、「火星の水はすべてが飲めるわけではない」ということです。
「オポチュニティ」は、最近はクレーター内部の岩にある明るい帯状の部分を調べています。科学者はこの物質が、クレーターができる前の火星の地表であると考えてきました。しかし調査の結果、これは火星の地下水位のいちばん上の部分であることがわかってきました。
火星の地表環境のシミュレーションの結果、「オポチュニティ」が調査をしているメリディアニ地域の状況がだんだんわかってきました。「最初は、環境の酸性度について注目していた。というのは、調査したところ、その環境が非常に酸性のようにみえたからだ。しかし、今は塩分について注目している。火星の微生物がいたとして、それには非常に厳しい環境であることがわかってきた。」(クノール氏)
メリディアニ平原は、かつては生命にとっても快適な環境であったと思われます。水はそれほど塩分が多くなかったようです。しかしその後、火星の他の地域も含めて、生命にとっては厳しい環境になったと考えられます。「40億年にわたって生命が生き延びるのには厳しいだろう。もしいるとすれば、まだ調査が十分になされていない、火星の地下か、古い地層だろう。」(クノール氏)
さて、マーズ・エクスプロレーション・ローバなど、ここのところ一連のNASAの火星探査は、「火星の水の調査」という方針で打ち上げられています。火星はなぜ、地球と違って水が少ないのかを解明することが目的です。
まもなく到着するローバ「フェニックス」及び、来年打ち上げられる予定の「マーズ・サイエンス・ラボラトリ」の目的は、「水がそこにあったか、から、水によって生命ができたか、を探っていくことが目的である。火星の水が存在した場所が、生命の存在に適しているかどうかを調べるのだ。もし生命が存在できるような環境があれば、その後の探査により、生命の存在そのものを調べることになる。」と語るのが、JPL(ジェット推進研究所)所長のチャールス・エラチ博士です。
エラーチ所長は、これまでの2代のローバの成果を引用し、「所定の探査期間の16倍も長く動作し、当初予定の20倍もの距離を走り回り、しかし最も重要なことは、火星の過去の水のはっきりとした証拠を見つけたことだ。」と述べています。「このような探査が簡単なことだとは思っていない。50年間の宇宙探査の歴史の中で、我々はまだ太陽系の無人探査の黄金期にいるのだ。個々の探査により、それまでの限界は押し上げられている。私たちはそれぞれの探査において新しいチャレンジを行っているのだ。」
・マーズ・エクスプロレーション・ローバ
http://moon.jaxa.jp/ja/mars/exploration/MER/
・フェニックス
http://moon.jaxa.jp/ja/mars/exploration/Phoenix/
・マーズ・サイエンス・ラボラトリ
http://moon.jaxa.jp/ja/mars/exploration/MSL/
・JAXAインタビュー チャールズ・エラチ
http://www.jaxa.jp/article/interview/vol37/