NASAの火星探査機メイバン(MAVEN)は、11月18日午後1時28分(アメリカ東部時間。日本時間では19日午前3時28分)、アメリカ・フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地の打ち上げ施設から打ち上げられました。打ち上げ後53分で探査機は打ち上げロケットであるアトラスVから分離し、打ち上げは成功しました。

打ち上げ後約1時間で太陽電池パネルは展開され、現在(プレスリリース発出時点で)探査機はこの太陽電池の電源で自立動作を行なっています。これからメイバンは火星に向けて10ヶ月間の飛行を行い、来年9月22日に火星に到達する予定です。

NASAのチャールズ・ボールデン長官は、今回の打ち上げ成功について次のように語っています。
「メイバンは、すでに火星に展開している周回機やローバーと共に、新たに火星の様相を探る探査に加わることになる。この探査は、2030年代に予定されている有人火星探査計画へとつながるものである。この探査は、戦略的、統合的な探査プログラムに基づくもので、太陽系の謎を解明し、さらに遠いところへと到達することにつながっていくだろう。」

今後数週間にわたって、メイバンは軌道上で電源を投入、搭載されている8つの機器のチェックを行います。火星到着の際には、火星周回軌道への投入のため、6つ搭載されているスラスターを噴射します。火星周回軌道に入ったあと約5週間にわたって軌道上での初期チェックを実施し、その後観測軌道上で1年間にわたって火星大気の観測を行います。

メイバンの主任科学者で、コロラド大学ボールダー校の大気・宇宙物理学研究所のブルース・ジャコスキー博士は、「10年以上にわたってこの探査の概念を練りあげてきて、そのあとはハードウェアの設計や構築を行なってきた。メイバンが火星へ旅立っていくのをみるのは本当にわくわくする思いだ。しかし、本当の『わくわく』は10ヶ月後(火星到着時)に始まる。火星周回軌道に入り、探査機がデータを収集し始めるときこそ、本当の意味での面白さが展開するのだ。」と述べています。

メイバンのプロジェクトマネージャーであるNASAゴダード宇宙飛行センターのデビッド・ミッチェル氏は、「メイバンのチームはあらゆる困難を克服し、スケジュール通り、予算の範囲内でメイバンの開発を行うことができた。政府、企業そして大学のパートナーシップが、強い意志で、火星へと向かうのをより遅くではなく、より早くしようという意志のもとに動いてきた。」と述べています。これは、10月に起こったアメリカ政府機関の予算執行差し止めによるNASAの業務停止のことに触れているものと思われます。ほとんどのNASA職員が自宅待機を余儀なくされ、一部報道ではミッションの延期もささやかれましたが、メイバンの打ち上げ準備はそんな中でも続けられ、最終的にスケジュール通りの打ち上げを行うことができました。

メイバンは、火星大気がどのようにして現在の状態になったのか、とりわけ、なぜ火星大気が失われ、現在のような薄い大気になってしまったのかを探ることを目的としています。現在の火星上層大気の様子を分析し、現時点での火星大気の散逸量を測定することで、科学者たちは、かつての火星の暖かく水に富んだ環境がなぜ現在のような乾いた環境に変化してしまったのか、その謎を探る鍵をみつけたいと考えています。