インドが来年、火星探査機を打ち上げることになりました。2日付のインドの新聞「インディアン・エクスプレス」が伝えています。
同紙によると、インド宇宙機関(ISRO)が立案したこの探査計画に、このほどシン首相が承認を与えたとのことです。この火星探査計画の総予算は45億ルピー(日本円で63億円)、打ち上げは来年(2013年)の11月20日が予定されています。
打ち上げはスリハリコタ射場で行われ、火星への到着は2014年9月の予定、打ち上げにはインドの大型ロケットであるPSLV−XLが使われるとのことです。
ISROの異なる組織に所属する185人の科学者がこの計画に従事しており、インドが2008年に打ち上げた月探査衛星「チャンドラヤーン1」の経験を受け継いで計画を進行させているということです。
月とは違い、火星は非常に多くのチャレンジを必要とします。探査機の自律制御をはじめとして、太陽から遠くなるため、より効率的な電力の供給が必要となります。さらに、推進系にも改良が必要となります。
さらにインド当局は、打ち上げ時には2隻の船に電波受信装置を搭載させて太平洋に赴き、既存の深宇宙通信網に加えて、打ち上げに必要となる電波のカバーエリア増強を行うことになっています。
インドが打上げに成功すれば、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、日本に続く5番目の国となります(編集長注: 周回に成功したのは、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、着陸に成功したのはアメリカとロシア。中国は昨年火星探査機を打ち上げたものの地球周回軌道から脱出できず)。
火星探査は決して容易な目標ではありませんが、宇宙庁の当局者は、「インドが持つ技術で火星周回軌道への投入が可能であることを実証する」と自信をみせています。また探査により、インドの国際的地位の向上も期待しているとのことです。
(編集長注)インドが火星探査を計画しているという話は前から流れてはいましたが、このほど政府承認が下りて正式なプロジェクトとなった模様です。
2013年というタイミングはなかなか微妙なポイントです。昨年衛星打ち上げに失敗した中国は、今度は来年に自前のロケットで火星探査機を打ち上げることを目指しています。一方、景気後退や財政赤字などで月・惑星探査計画の削減を強いられているアメリカは、火星探査についてもやや後退気味です。ヨーロッパは2018年の「エクソマーズ」計画を進めていますが、やはり予算不足のため、ロシアと組むことが検討されています。
インドの火星探査計画は、まだ名前すらも明らかになっていないくらいですし、ISROのホームページでも紹介されていないくらいですので全容は不明ですが、成功すれば、記事にもあるように、宇宙大国への仲間入りを果たせることは間違いないでしょう。しかし、月探査機「チャンドラヤーン1」の失敗などを考えると、自前の深宇宙探査技術をどこまで磨けているのか、不透明な部分があることは否めません。
また、インドは同じ2013年に、ロシアと共同での月探査「チャンドラヤーン2」を行うとされていますが、こちらについてもまだ詳しい情報は入っていません。
・インディアン・エクスプレスの8月2日付の記事 (英語)
  http://www.indianexpress.com/news/indias-mars-mission-in-nov-next-year-cabinet-to-give-nod-today/982745/0
・インディアン・エクスプレスの7月14日付の記事 (ビデオあり)(英語)
  http://www.indianexpress.com/video/national/6/mission-to-mars-in-2013-isro/10969