先日のブログで中国が2020年に火星探査機を打ち上げる計画を示したことをお伝えしましたが、その続報が入ってきています。
全国政治協商会議委員で、中国の宇宙開発の中核を担っている企業である中国航天科技集団公司の科学技術委員会主任という肩書も持つ包為民氏がこのほどインタビューに応じ、中国の火星探査計画が順調に進められているということ(これは、すでに計画が実施段階に入っている=構想だけではないということを意味しています)、また、中国の火星探査が通常、あるいはこれまで他国が行ってきたやり方とは異なる「大胆な道」で行われると述べています。人民網日本語版が伝えています。

この「大胆」というのは何を意味しているのでしょうか?
通常、月・惑星探査は、いくつかのステップを踏んで実施されます。ある天体を探査する際には、第1段階としてそのそばを通りすぎて観測する「フライバイ」、その次には天体の周りを回って探査する「周回」、そして第3段階として着陸して探査する「着陸」(ローバー探査も含みます)、そして第4段階に、サンプルを持ち帰る「サンプルリターン」という手順で進みます。これはどの国、どの天体の探査でもほぼ同じで、いきなり第3段階に行くというようなことはあまり行われません。

包氏は、中国の火星探査がまさにこの「いきなり第3段階」(=着陸・ローバー探査)に進むことを「大胆な道」と評しているのです。
(なお、記事中ではアメリカや旧ソ連が「火星からのサンプルを持ち帰った」とありますが、これは誤りです。いまもって無人・有人ともに火星のサンプルリターン探査は実現していません。)
包氏は、このようないきなり高次元の探査に挑むことは難易度が高いが、「中国人が革新の面で大胆に前進する決意を示し」ていると述べ、「最小の犠牲と最短の時間により」このプロジェクトを実現させるという決意を示しています。

もっとも、中国がいきなりこのような「大胆な道」に行けるのにはそれなりの理由があります。まず消極的な側面からいえば、火星探査の主流は周回探査から着陸探査に移ってきており、いまさら周回探査に乗り出したとしてもインパクトが薄い、ということがあります。とりわけ、ライバル視しているインドがすでに周回探査機「マンガルヤーン」を送り込んでしまっている以上、それを超えるとなれば「着陸」という大胆な道しか中国には残されていません。
一方、アメリカ、ヨーロッパなどが周回探査を何年にもわたって続けてきた結果、すでに火星表面については膨大な量のデータが得られており、着陸に適した場所を探し、そこに降りるといったことについても、改めて周回機を打ち上げることなく実現できるということはあります。もっとも、中国の火星探査は周回機と着陸機のペアとなりそうではありますが。

いずれにしてもこの記事は、中国が火星探査にかなりの力を入れようとしていることを示しているといえるでしょう。