アメリカとアラブ首長国連邦(UAE)がこのほど、宇宙開発分野での協力を拡大するための協定に調印しました。12日、UAEの首都アブダビで、NASAのチャールズ・ボールデン長官と、UAE宇宙機関のカリファ・アル・ロマイティ長官が協定書に調印しました。
今後両国は、航空宇宙研究、宇宙空間や空域の平和目的での探査・利用について協力し、共に人類にとって利益となる、宇宙空間の利用を促進していくことになります。

協定に調印するNASAとUAE宇宙機関の両長官

協定に調印するNASAのチャールズ・ボールデンとUAE宇宙機関のカリファ・アル・ロマイティの両長官 (Photo: NASA)

今回の協定について、NASAのボールデン長官は「NASAが現在進めている有人火星探査計画では、多くの民間企業、そして国際的なパートナーとの協力が含まれている。今回のUAEとの協定は、このような協力関係を推し進めるものであり、また宇宙空間の平和的な探査にも貢献するものである。すでに両国の技術者が相互に関心の高いいくつかの分野において協力した取り組みを進めており、私としてはこの2つの宇宙機関は今後何年にもわたって協力関係を結び、航空宇宙、探査そして発見という共通の目的に向かって進んでいくだろう。」とその意義を強調しています。
また、アル・ロマイティ長官は、「UAEとアメリカは長きにわたる同盟関係を結んでおり、経済的、文化的、そして外交的にも強く結ばれている。UAE宇宙機関は、アメリカ、そしてNASAと航空宇宙分野、宇宙科学分野、そして宇宙の平和的な探査において協力し、一緒に動いていけることを素直に喜びたい。そしてそれは人類のより大きな幸福という普遍的な目標に結びつくものである。」と語っています。

両長官が語った通り、この協定は宇宙探査と利用について協力関係を結ぶことで互いに大きな利益が得られるということを示すものであり、また今後長期にわたってアメリカとUAEとが長期にわたるパートナー関係を結ぶことにも貢献するものです。

協定は宇宙科学、地球観測及び地球科学、航空宇宙、探査機・衛星運用、教育、技術、安全さらには宇宙保険など幅広い分野にわたるものです。
今後両国は、共同での地球観測プログラム(航空機利用、あるいは宇宙からの観測)を継続していくことになります。その中には航空機や探査機搭載の機器、研究機関や通信用設備の相互利用なども含まれていきます。
また、両国は宇宙に関する教育やアウトリーチ(普及啓発)の分野での協力についても合意しています。探査などで得られたデータの相互交換や科学者、技術者の交流、さらにはこういった分野での標準化なども協定には含まれています。
このように今回結ばれた協定は非常に包括的なものですが、いちばん注目すべきなのは、やはり火星探査に関する協力関係でしょう。

ご存知の通り、UAEは2020年打ち上げを目指して、火星探査計画「アル・アマル」を進めています。今回の協定でも火星探査分野は重点項目となっているようで、この分野においての両宇宙機関間の協力に関する実施取り決めが結ばれています。この取り決めの中には、将来的に共同での火星探査計画を実施できるかどうか検討するための共同作業グループの設置が盛り込まれています。

アル・ロマイティ長官は、UAE宇宙機関は創設当初から他の宇宙機関との協力関係を重視してきたと語り、この協定が「アメリカとUAEの多くの組織にまたがる、幅広い分野にわたる相互に利益をもたらすプログラムや活動につながる」と期待感を表しています。さらに、国際協力こそが技術開発を促進するものであり、UAEにおける宇宙開発も促進することになるとして、国際協力の重要性をアピールしています。長官は「宇宙産業はUAEにおいて経済成長、そして産業の多様化の促進役となっており、私たちの日常生活にとっても今後、大きな利益をもたらしてくれると思う。」と述べています。UAEとしては、今後宇宙産業を国の大きな柱として育成してく予定であり、その象徴が火星探査「アル・アマル」であるというわけなのです。

アメリカとUAEという2つの国が、火星探査などを含めた広範な協定に調印したことで、今後中東地域での宇宙開発にも大きな影響が出てくることが考えられます。もちろん、火星探査についても要注目でしょう。一方で、アメリカが火星探査という「武器」を使って、宇宙開発を一緒に進める国を選別にかかってくる可能性も考えられます。この協定の意味を理解した上で、日本としても宇宙開発、そして月・惑星探査にどう取り組んでいけばいいのか、しっかりと考える必要があるでしょう。